初めましての私の人生
ねえ、聞こえる?
ねえ、聞こえますか?
ここは…どこなんだろう…。
暗いような…。
でも、…温かい。
心までが温かくなるよ。
あの光は何だろう。
ん!? 誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。
あの声は誰?
温かい声。優しい声。心が安らぐ声。
「ノリコ、頑張れ!」
「う、うん…タツヒコさん」
「俺が、俺がついているぞ」
「うん…」
「ノリコ!」
「奥さん、もう少しですよ」
「はいっ…」
「頑張れ、ノリコ」
「手…、離さないでね」
「当たり前だ。頑張れ、ノリコ!」
「うん、ありがとう」
「奥さん、ここです」
「はい」
「…」
「………」
えっ!? ここから出ないといけないの?
ここなら安心していられるのになぁ。
でもね。大切な誰かが私を呼ぶ声が聞こえるから。
何かに押されるように、私はその場所を飛び出した。
そして、ある深夜の病院で、元気の良い赤ちゃんの声が響く。
「おぎゃぁ~~~」
初めましてと言おうとしたのだけど…。
口から出たのは違った。
「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」
「ノリコ、頑張ったな」
「うん、ありがとう、タツヒコさん」
声が聞こえるのだけど、私には何を言っているのかわからなかった。
それに、まだ良く見えないから。
薄っすらと光と誰かの姿が見えるけどね。
「頑張ったな、サクラコ」
「タツヒコさん?」
「どうかしたかい?」
「サクラコって、誰?」
「この子の名前だよ」
「もう、私に何も言わないで決めないでね」
「…ダメ…かい?」
「ううん、嬉しい。本当に良い名前ね」
「そうか?」
「うん、ありがとうね、タツヒコさん」
「安心したよ」
「サクラコちゃん、私があなたのママよ」
「サクラコ、俺がパパだぞ」
「では、新生児室に移動しますので」
「はい」
「よろしくお願いします」
「安心してお任せ下さい。お母さんにお父さん」
あれっ!? 離れ離れになるの?
何かの…何だろう?
部屋みたいなものに移されちゃった。
どこかに行くのかな?
「お父さんだってさ、俺」
「私はお母さんよ。もう、何を笑って泣いているのよ」
「そうか? 気づかなかったよ」
「あはは、私も同じよ」
「そうだな」
「うん」
私はこの会話を聞いていなかった。
後になって、聞いたのだけどね。
私、生まれたんだ。
初めまして、ママ。
初めまして、パパ。
初めまして、私の人生。
よろしくね。
初めましての私の人生




