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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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丘の上とのんびり生活防衛戦線

両隊長から一通りの話を聞き終えた後、メイヤは深く息を吐いた。


「……まあ、確かに」


元、居た世界とは違う。

治安も、常識も、ルールも違う。


「こっちは、のんびり暮らしたいだけなのに……」


メイヤの目が、すっと細くなる。


「それを邪魔するやつからは――容赦しない」


声は小さいが、やけに重かった。


領境視察へ。


「というわけで、まずは現地を見たいです!」


そう宣言すると、両隊長は顔を見合わせてから頷いた。


「では、案内しましょう!移動手段は――専用馬車で行きます!」


当然のように言うメイヤ。


「……専用?」


「え?」


機構隊長が首を傾げた、その直後。


「メイヤ様、こちらです!」


執事ガルドの補佐が扉を開く。


そこにあったのは――一目で分かる、“普通じゃない馬車”。


板ばね式の足回り。

座席は広く、内装は柔らかい布張り。

窓には風よけの工夫までされている。


「……いつの間に」


「ロットさんとタルトさんが“試作です”って」


メイヤは、当然のように乗り込んだ。


「乗り心地、最高なのよこれ」


馬車が走り出す。揺れが、少ない。


「……これは」


近衛隊長が思わず感心する。


「軍用に欲しいな」


「ダメです。私用です」


即答だった。


領境の地形。しばらく走り、馬車は止まった。


「ここが、領境です」


丘の上。視界は広く、遠くまで見渡せる。


「……なるほど」


メイヤは馬車を降り、周囲を見回した。


「高所……これは有利ね」


歴史物は好きだった。

戦国ものも、城ものも、割と見てきた。


「ここ、敵が来るなら下から登ってくるのよね」


「ええ」


「見通しがいい。奇襲は難しい」


メイヤは地面を踏みしめる。


「この丘、天然の要塞じゃない」


両隊長が、黙って頷く。


「ここを押さえられたら、領内への侵入は相当厳しくなる」


「つまり……」


メイヤは、にっと笑った。


「ここに“牙”を置けばいい」


現地戦術講座(簡易)


その後、両隊長から説明を受けた。


・想定される侵入経路

・偵察時の動き

・小規模武装集団の場合

・商人偽装時の対応


「……なるほど」


メイヤは腕を組む。


「最初は様子見、ですね。いきなり軍を出すと、王都が動く。でも、何もしないと舐められる」


メイヤは、ふむ、と頷いた。


「つまり」


少し考えてから、口を開く。


「最初は“防御的存在感”を出す。威圧しすぎず、弱くも見せない」


「……難しいですね」


「だから」


メイヤは、指を立てた。


「出城よ」


メイヤ式・即席出城構想。


「私が、基本設計をやってみるわ」


両隊長が、同時に見る。


「……メイヤ様が?」


「ええ。専門ではないですが……」


メイヤは、地面に棒で簡単な図を描き始めた。


「基本は、四角。柵+土嚢+簡易櫓。門は一つ、視界を絞る。櫓の位置は、ここ。射線が重なるように」


隊長たちの表情が、徐々に真剣になる。


「……これは。素人の落書きですが」


メイヤは、さらりと言った。


「“基本型”としては十分でしょう?これを元に、規格化。部材は事前生産。荷馬車強化型に積載。合図があれば、一気に展開」


機構隊長が、ゆっくり息を吐いた。


「……合理的です」


「想定時間は?」


「数日で形に」


「敵が“何だこれは”って思ってる間に完成させるの」


近衛隊長が、苦笑した。


「……嬢ちゃん、怖いな」


「のんびり生活のためです」


即答だった。


そして、火力。

メイヤは、最後にぽつりと言った。


「……あと。遠距離兵器も欲しいわね。クロスボウは、もうある。なら……」


メイヤは、首を傾げる。


「えーっと……大型の……」


「バリスタ、ですね」


「それそれ!」


勢いよく指を鳴らす。


「ざっくり設計するから、作ってみて!」


「え、ざっくり?」


「大丈夫大丈夫。ロマン兵器だし」


両隊長が、顔を引きつらせた。


「……試作でお願いします!今話した事をロッドさんとタルトさんに。出城の件も。それに両隊長にも設計の変更あれば私を通さずに変更して下さい!」


「もちろん!」


メイヤは、満足そうに丘を見下ろした。


ここに、城が立つ。

小さくても、確かな意思を持った“壁”が。


「よし!私の、のんびり生活は――私が守る!」


風が吹き、草が揺れる。丘の上で、ひとつの防衛線が、静かに産声を上げようとしていた。

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