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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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出城拡張と温泉から始まる危険な連想

両隊長は、工房にてロットとタルトから最近の領地状況の説明を受けていた。


鉛筆事業。版画工場の拡張。遊技具の量産。

学校兼託児所。そして、シフト制という前代未聞の制度。


「……まあ」


機構隊長が腕を組む。


「確かに、ここまでやれば目を付けられる。むしろ、よく今まで何も起きなかったな」


近衛隊長も頷く。


ロットは、いつものように空を見上げ、フォフォフォと笑った。


「いずれ、こうなるとは思っておったよ。だからこそ、備えは早い方がええ」


荷馬車と出城、そして火力。

早速、話は具体に移る。


「まずは、荷馬車強化型の増産じゃな」


「それと」


近衛隊長が、巻物を広げる。


「メイヤ様が描いた出城案を元に、改修した設計図です」


簡易ながら、要点を押さえた構造。

射線、柵、櫓、資材運搬の流れ。


「これに合わせた建築パーツの作成。それと――」


「バリスタじゃな」


ロットが、にやりと笑う。


「話は聞いとる。ロマン兵器じゃろ?」


「ロマンで済めばいいんですが……」


タルトが遠い目をする。


規模変更の提案。

ひと通り話が終わったところで、ロットが一言付け加えた。


「ただの。この出城の規模じゃがな。50名想定では、小さい」


両隊長が、同時に顔を上げた。


「……何?」


「50名程度の駐屯では、抑止力が足りん」


「100名規模に変更した方がええ」


「大きすぎませんか?」


近衛隊長が首を傾げる。


「各隊の部下は20名ほどですし……」


ロットは、フォフォフォと笑った。


「何を言っとる。この領地を守ろう、という志願者も出るじゃろ。それに」


設計図を指で叩く。


「この構造なら、倍以上にしても工期はそう変わらん。部材を規格化しとるからな」


しばし沈黙。

やがて、機構隊長が息を吐いた。


「……了解しました」


「100名想定で進めましょう」


こうして、出城は“即席”の域を超え始めていた。


その頃のメイヤは。


「――――――――――――――――――――――――っ!!」


メイヤは、全力で馬を走らせていた。


「地図だと……この辺!」


鼻をくすぐる、独特の臭い。


「……来た」


硫黄の臭い。


「温泉確定!!」


地面から立ち上る水蒸気。地図通りの場所に、池。


「……あ、でも」


水面が、ぼこぼこと不穏に揺れている。


「……これ、無理」


直接入ったら、間違いなく大火傷。


「ひとっ風呂、とはいかないわね……」


近くに水源もない。薄めることも出来ない。


「がっくし……」


肩を落とした、その時。


「……ん?」


メイヤの脳内で、別の回路が繋がった。


「温泉。硫黄……炭、あるわよね。硝石があれば――」


黒色火薬という誘惑?


「……黒色火薬、作れる?」


自分で言って、自分で首を振る。


「いや、銃は無理よ。流石に」


でも。


「竹筒なら?火縄銃じゃなくても、導火線つけて、投げるだけなら……」


敵が、爆音と火花で驚く。


「びっくりはするわよね……蹴散らせる」


メイヤは、はっと我に返った。


「……いやいやいや」


「落ち着け私」


硝石の取り方(思い出しメモ)


「硝石……どうやって取るんだっけ……」


頭の中を探る。


「確か……」


・家畜の糞尿

・藁

・土

・灰


「これを、湿った場所に積んで。しばらく放置。硝酸菌が働いて……できた土を水で溶かして、灰を入れて、煮詰める。結晶が出る……」


「……だった、はず」


一気に思い出して、頭を抱える。


「やばい。知識が、やばい方向に使えそう。しかも家畜を1ヶ所に集めて、糞尿は肥料を作ってる。。準備は出来てしまってる」


自制(少し遅い)


「流石に。これ、私一人で決めちゃダメなやつよね……」


軍事。火薬。一線を越える話。


「……でも」


温泉を見つめる。


「備えとして、可能性を知っておくのは……」


メイヤは、深く息を吸った。


「まずは、温泉の利用方法を考える。硫黄は、副産物。うん、そういうことにしよう」


自分に言い聞かせる。


「黒色火薬は…………最終手段」


メイヤは、踵を返した。

温泉は逃げない。

だが、領地の安全は待ってくれない。


こうして、温泉視察は、思わぬ方向への“引き金”を、静かに準備していた。

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