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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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丘の上とのんびり生活防衛戦線

両隊長から一通りの話を聞き終えた後、メイヤは深く息を吐いた。


「……まあ、確かに」


元居た世界とは違う。

治安も、常識も、ルールも違う。


「こっちは、のんびり暮らしたいだけなのに……」


メイヤの目が、すっと細くなる。


「それを邪魔するやつからは――」


「容赦しない」


声は小さいが、やけに重かった。


■ 領境視察へ


「というわけで、まずは現地を見たいです!」


そう宣言すると、両隊長は顔を見合わせてから頷いた。


「では、案内しましょう」


「移動手段は――」


「専用馬車で行きます!」


当然のように言うメイヤ。


「……専用?」


「え?」


機構隊長が首を傾げた、その直後。


「メイヤ様、こちらです!」


執事ガルドの補佐が扉を開く。


そこにあったのは――

一目で分かる、“普通じゃない馬車”。


板ばね式の足回り。

座席は広く、内装は柔らかい布張り。

窓には風よけの工夫までされている。


「……いつの間に」


「ロットさんとタルトさんが“試作です”って」


メイヤは、当然のように乗り込んだ。


「乗り心地、最高なのよこれ」


馬車が走り出す。


揺れが、少ない。


「……これは」


近衛隊長が思わず感心する。


「軍用に欲しいな」


「ダメです。私用です」


即答だった。


■ 領境の地形


しばらく走り、馬車は止まった。


「ここが、領境です」


丘の上。

視界は広く、遠くまで見渡せる。


「……なるほど」


メイヤは馬車を降り、周囲を見回した。


「高所……これは有利ね」


歴史物は好きだった。

戦国ものも、城ものも、割と見てきた。


「ここ、敵が来るなら下から登ってくるのよね」


「ええ」


「見通しがいい。奇襲は難しい」


メイヤは地面を踏みしめる。


「この丘、天然の要塞じゃない」


両隊長が、黙って頷く。


「ここを押さえられたら、領内への侵入は相当厳しくなる」


「つまり……」


メイヤは、にっと笑った。


「ここに“牙”を置けばいい」



■ 現地戦術講座(簡易)


その後、両隊長から説明を受けた。


・想定される侵入経路

・偵察時の動き

・小規模武装集団の場合

・商人偽装時の対応


「……なるほど」


メイヤは腕を組む。


「最初は様子見、ですね」


「ええ」


「いきなり軍を出すと、王都が動く」


「でも、何もしないと舐められる」


メイヤは、ふむ、と頷いた。


「つまり」


少し考えてから、口を開く。


「最初は“防御的存在感”を出す」


「威圧しすぎず、弱くも見せない」


「……難しいですね」


「だから」


メイヤは、指を立てた。


「出城よ」



■ メイヤ式・即席出城構想


「私が、基本設計をやってみるわ」


両隊長が、同時に見る。


「……メイヤ様が?」


「ええ」


「専門ではないですが……」


メイヤは、地面に棒で簡単な図を描き始めた。


「基本は、四角」


「柵+土嚢+簡易櫓」


「門は一つ、視界を絞る」


「櫓の位置は、ここ」


「射線が重なるように」


隊長たちの表情が、徐々に真剣になる。


「……これは」


「素人の落書きですが」


メイヤは、さらりと言った。


「“基本型”としては十分でしょう?」


「これを元に、規格化」


「部材は事前生産」


「荷馬車強化型に積載」


「合図があれば、一気に展開」


機構隊長が、ゆっくり息を吐いた。


「……合理的です」


「想定時間は?」


「数日で形に」


「敵が“何だこれは”って思ってる間に完成させるの」


近衛隊長が、苦笑した。


「……嬢ちゃん、怖いな」


「のんびり生活のためです」


即答だった。



■ そして、火力


メイヤは、最後にぽつりと言った。


「……あと」


「遠距離兵器も欲しいわね」


「クロスボウは、もうある」


「なら……」


メイヤは、首を傾げる。


「えーっと……大型の……」


「バリスタ、ですね」


「それそれ!」


勢いよく指を鳴らす。


「ざっくり設計するから、作ってみて!」


「え、ざっくり?」


「大丈夫大丈夫。ロマン兵器だし」


両隊長が、顔を引きつらせた。


「……試作でお願いします!今話した事をロッドさんとタルトさんに。出城の件も。それに両隊長にも設計の変更あれば私を通さずに変更して下さい!」


「もちろん!」


メイヤは、満足そうに丘を見下ろした。


ここに、城が立つ。

小さくても、確かな意思を持った“壁”が。


「よし」


「私ののんびり生活は――」


「私が守る!」


風が吹き、草が揺れる。


丘の上で、ひとつの防衛線が、静かに産声を上げようとしていた。

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