失敗作の使い道
リュミエル・フェーンは――
最初に作った、あの“発光器”を抱えていた。
大型通信機の完成以降、すっかり“旧式”扱いされ始めた代物。
「……はぁ〜」
歩きながら、深くため息。
「……何か、やっちまったか?」
セリアから、直々の呼び出し。
「それとも……」
抱えた発光器を見る。
「無駄に作った、これの件で怒られるんか……?」
「来たわね」
「ひぃっ!?」
いつの間にかもう、セリアがいた。
「はぁ……」
リュミエルは観念した顔になる。
「それで……何の用ですか?」
「その持って来た、それよ」
セリアが、発光器を指差す。
「……あー」
リュミエル、しょんぼり。
「失敗作、作ってすみま――」
「あら?」
「失敗作に、するの?」
「……へ?」
リュミエルが固まる。
「貴女に聞きたい事があるの」
「……は、はい」
「その持って来た物だけど人の背中に、背負える様に出来る?」
「……え?まあ……可能ですが?」
「そう」
セリアは、にやりと笑う。
「それ、何個か“チャンネル”って言ってたわね?」
「はい」
リュミエルは少しずつ調子を取り戻す。
「相手を五個、選べます。同じ数字同士に合わせるとお互いに、光を飛ばせます」
「そうみたいね」
セリアは、机を指で叩く。
「なら、私からの指示よ」
「……?」
「例えば、チャンネルを“変えられない物”自体を作る」
「……はぁ?」
リュミエルの顔が止まる。
「例えばよ」
セリアは、指を一本立てる。
「1番は、鉄道用」
二本目。
「2番は、船用」
三本目。
「3番は、港湾」
「つまり運用する“組織そのもの”で固定するの」
「……!」
リュミエルの目が、見開く。
「そして最後、今まで通り、5種類全部使える物。これは――軍用ね」
「!?」
「強制的にでも」
セリアの目が、少し鋭くなる。
「他組織に入り込める様にする」
「…………そうか!!」
リュミエル、完全覚醒。
「固定なら!!一つ機能だけで済む!!価格が下がる!!混乱しない!!事故も!!即報告!!船も!!手信号より、天候に左右されにくい!!」
「そうよ」
セリアは、満足そうに頷いた。
「作る数は、追って連絡するわ。トントン、とか、トーン、とかその意味付けは、貴女じゃなく文官に作らせる。だから貴女は、その機械を作っておいて」
「クゥーーーーッ!!」
リュミエル、感極まる。
「アンタも、頭いいな!!解った!!!」
そのまま飛び出そうとした瞬間。
「それと」
「はい!」
「……ちゃんとお風呂も入りなさい」
「…………」
「……はい」
その背中は、少しだけ小さかった。
だが。“失敗作”と思われた発光器は――
今この瞬間、鉄道。船。港。軍。
用途別に分化し、“神経の末端”として生まれ変わった。セリアは、使えない物を捨てない。
「使い道を、変える」
それこそが――本当に恐ろしい才能だった。




