繋がる領地
「……上手く届いたみたいね」
セリアは、印字された紙を見ながら満足そうに頷いていた。
「ふふ」
その表情は、珍しく隠しきれないほど機嫌が良い。
革命的。
まさに、その一言だった。
本来なら――フェルナードから王都。
船で数時間。伝令なら、さらに手間。
確認し返答を待ちで、からの往復。
だが、今は違う。
「時間差が、ほぼ無い」
遠く離れた相手と、“今この場”で話せる。
「……良いわね」
執務室には、アステリアとの通信実験を見守って居た、三名の男爵達も同席していた。
木材。畜産。穀倉。それぞれの領主達。
「……これは」
木材男爵が、紙を見つめたまま呟く。
「有る意味……恐ろしいな」
「ええ」
畜産男爵も、珍しく真顔だった。
「情報が、距離を超える……」
最年少男爵も、完全に息を呑んでいる。
「……そんな事が、本当に……」
「するのよ」
セリアは、あっさり言う。
「だから」
一拍。
「貴方達の領地にも、これを渡すわ」
「!?」
三人の視線が、一斉に上がる。
「……本気か?」
「流石に」
セリアは肩をすくめる。
「実験してから、だけど」
「直接届くのか?」
「そこは確認次第」
地図へ視線を落とす。
「でも」
指先が、王都を示す。
「直接じゃなくても王都経由なら、話せるはず」
「……なるほど」
フェルナード。王都。各男爵領。
「ここから王都」
「王都から各領地」
「距離的には、多分同じくらい」
中継。接続。拡張。
「……」
三名は、もう理解していた。
これは単なる便利道具ではない。
「……領地運営、そのものが変わる」
「そういう事」
セリアは、にやりと笑う。
「だから」
机を軽く叩く。
「技術者も育てる」
「……」
「更には、運用方法」
「ルール?」
「当然でしょ」
セリアは即答した。
「緊急連絡」
「軍事」
「経済」
「個人連絡」
「何でもかんでも使えば、混乱する」
「……確かに」
「優先順位」
「暗号」
「管理者」
「利用制限」
「ある程度、最初に決めないと便利すぎる物ほど」
少しだけ目を細める。
「管理を間違えると、危険よ」
その場の全員が、黙った。
便利。だが――強すぎる。
「……恐ろしい、か」
セリアは、小さく笑う。
「まあ、そうね」
「でも」
一拍。
「使わない理由には、ならないわ」
鉄道で物流を握る。通信で情報を握る。
それはもう、単なる発展ではない。
「時代を先に作る側」
三名の男爵達は、改めて理解していた。
フェルナードは――もう、一領地の枠では見れない。




