光が文字になる日
数日後――
メイヤは執務室で、山のような書類に目を通していた。
「……ふぅ」
建築計画。鉄道敷設。移住希望者。工場拡張。
「……終わらない」
小さくぼやく。
その時。
「……メ……イ……ヤ……」
「……ん?」
メイヤの手が止まる。
「……気のせい?」
再び、書類へ戻ろうとした瞬間。
「……メイヤ……」
「え?」
顔が上がる。
「……やっぱ、聞こえた」
「メイヤ」
「うおっ!?」
いつの間にか目の前。
「!?」
リュミエル・フェーンが立っていた。
「ちょっ!?いつの間に部屋に入ったのよ!?」
「……出来たぞ……」
「……」
「……貴女」
その顔を見て、メイヤは呆れた。
「ちゃんと、ご飯食べて寝なさいよ」
目の下、真っ黒。髪、ぼさぼさ。服、よれよれ。
「……」
そのまま。
ドサッ。
「ここで力尽きて寝るな!!」
「はぁ〜……」
数時間後。
「復活!!」
「……今度は何よ」
メイヤは半眼だった。
「出来たぞ!!しかも!!多分、使い勝手もっと良くなった!!」
「……ん?」
「来てくれ!!」
連れて行かれた先は、開発棟の横。
「……何これ?」
真新しい建物。以前は無かった。
「中だ!」
扉を開ける。
「……うお」
そこには――大量の機械。
歯車。配線。点滅。紙。金属音。
「……何じゃ、この機械類は?」
「気付いたんだよ!」
リュミエルの目が輝く。
「受け取る側が!光の点滅を、一個ずつ解読するの!面倒くせぇってな!!」
「……まあ、そうね」
「なら!!」
両手を広げる。
「文字そのものに変換すればいい!!」
「……は?」
「点滅信号を受け取って!意味を判別して!文字として印刷する仕組み!!」
「……」
「作った!!」
ガチャン。
カタカタ。
紙が、少しずつ出てくる。
『キンキュウ オウトヨリ レンラク』
「……うお!!」
メイヤの目が、完全に変わる。
「すげぇ!!!」
「だろぉ!?」
「でも!」
リュミエルは、少し悔しそうでもある。
「大型化しちまった!!」
確かに、デカい。建物一つ使う規模。
「だから!目指すは、小型化!!最初の簡易型も、無駄じゃねぇ!!用途で使い分ける!!こっちも、まだまだ開発続行だ!!」
「……」
メイヤは、その巨大な通信機械を見上げる。
点滅。光。文字。印刷。
「……これ」
鉄道だけじゃない。
「情報そのものが走る」
物流革命。通信革命。
「……良いじゃない」
その目は、完全に“次”を見ていた。
「もっと広げるわよ」
フェルナードは今――“距離”そのものを、
塗り替え始めていた。




