光を運ぶ線
「おーい! メイヤ!!」
開発棟の奥から、騒がしい声が響いた。
「……ん?」
振り返るより先に、
「実験、終わったぞー!!」
リュミエル・フェーンが、満面の笑みで駆け込んでくる。
「……随分と早いわね」
メイヤは少し呆れ顔。
「そりゃそうだ!」
リュミエルは興奮気味に叫ぶ。
「ここにある、あの高い塔!」
指差す先。領内でも目立つ監視塔。
「その上に“アンテナ”立てたらな!」
「……うん」
「領内なら、どこまでも届いたぞ!!」
「……」
メイヤの目が、細くなる。
「まだ限界は分からん!でも、相当遠くまでいけるかも!」
トン。トン。トン。
メイヤは机を指で叩く。思考が、加速する。
領内。港。鉄道。工場に、エドラン。
「……なら」
顔を上げる。
「大量に、あの機械を作って」
「……へ?」
リュミエルが固まる。
「大量に、だよ」
「……え?」
「今すぐ」
「……よく分からんけど」
リュミエルは少し困惑しながらも、
「分かった!任せろ!!」
そのまま、また駆けていく。
メイヤは、その背を見送りながら小さく笑った。
「……本人、まだ気付いてないわね」
これは、ただの珍しい機械じゃない。
各地に設置する。光を送る。
意味を持たせる。
「……モールス信号に近い」
点。間隔。順番。
“離れていても、情報が伝わる”
それは――今までの常識を変える。
「港で何かあった」
「鉄道で事故」
「王都から連絡」
「エドランから支援要請」
全てが、“伝令より速く”なる可能性。
「……良いわね」
物流革命。鉄道。蒸気。
そして今――
「情報革命」
メイヤは、静かに確信していた。
「……これ」
一拍。
「軍も、経済も、政治も変える」
遠く離れた場所が、“その場に近づく”。
それは――“線路”の次に生まれた、
新たな“線”の始まりだった。




