若き領主の結論
もう一人の男爵――
三人の中で、最も若い彼は、静かに机に向かっていた。
窓の外には、見慣れぬ風景。
だが、その視線は内側へ向いている。
……僕は、小さく息を吐く。
経験も、知識も足りない。
他の二人と比べれば、明らかだ。
それは――自分でも、よく分かっている。
でも、顔を上げる。ここで得たものは、本物だ。
この領地の技術。知識。仕組み。
導入した結果は……思い出す。
領地の変化を。
分かりやすいほど、変わった。
生産性は上がり。収穫量は増えた。
それだけではない。作業時間が、減った。
負担が軽くなった。それが、次を生む。
加工にも手を出せるようになった。
小麦をそのまま売るのではなく。
付加価値を付ける。
「価格の暴落を防ぐ」
それが、少しずつ形になり始めている。
時間が、余る。
ぽつりと呟く。
余った時間で、穀物庫の修繕に増築。
お金も……回り、余裕が生まれる。
それをまた、別の場所へ回せる。
……循環してる。
小さく頷く。
これは、確かな変化だ。
それにもう一つ。学びにも、力を入れられる。
この領地を見て、気付いた。
基盤は、そこにあると。
今はまだ、だけど。視線が遠くへ向く。
あと数年もすれば、確信がある。
強い領地になる。
「……それくらいは」
小さく呟く。
「僕にも、分かる」
そして思考は、自然と次へ進む。
王政。現状の体制。
……何も教えてくれない。
指示だけ。負担だけ。
それよりは静かに、だがはっきりと。
ここと、仲良くやる方がいい。
結論は、単純だった。
若さゆえの迷いはある。
だが――それ以上に。
「現実を見た者の判断」が、そこにあった。




