表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

476/482

異文化の室

三人の男爵は、案内されるまま建物の前で足を止めた。


「……ここか」


外観は落ち着いている。

だが――どこか、今までの建築とは違う。


「旅館、と言ったな」


「ああ。まだ開業前らしいわよ」


軽く言葉を交わし、中へと入る。


「……」


足を踏み入れた瞬間。

三人は、無言で周囲を見渡した。

新築の木材の香りが、ふわりと広がる。


「……これは」


見た事のない造り。梁の見せ方、空間の取り方。どこか開放的で、それでいて落ち着く。


「こちらへ」


案内人に促され、部屋へと通される。

扉を開けた先。


「……ほう」


思わず声が漏れる。

そこもまた――未知の様式だった。


「靴は、こちらで」


「……脱ぐのか」


「はい」


短く答えが返る。三人は顔を見合わせ、


「……郷に入れば、か」


小さく呟きながら靴を脱ぐ。

足を踏み入れる。


「……柔らかい?」


足裏に伝わる感触。

青草のような、独特の香り。


「……落ち着く」


自然と、そう思えた。


「こちらへどうぞ」


示されたのは、四角い布のようなもの。


「……これに座るのか?」


「はい」


簡潔な返答。

三人は試しに腰を下ろす。


「……なるほど」


意外なほど、安定する。


「お茶をお持ちします」


案内人はそう言い残し、静かに部屋を出て行った。


「……」


しばし、沈黙。誰もが、部屋を見回している。


「慣れない様式だが……悪くないな」


一人が呟く。


「……そうね」


別の男爵も頷く。


「だが、寝具が見当たらないのね」


「ベッドが無い部屋、か」


確かに珍しい。ふと、窓へと視線が向く。


「……」


外には、遠くの山並み。緩やかな風景。


「……いい眺めだ」


自然と声が出る。


「……計算されているな」


ぽつりと誰かが言う。


「景色まで含めて、か」


ただの宿ではない。


「……楽しませる、か」


その発想自体が、新しい。


「……聞いた事もないな」


小さく呟く。


静かな空間。木の香りと、外の風景。

そして、どこか落ち着く空気。

三人はまだ気付いていない。

これはただの“建物”ではなく――

価値観そのものが、変わり始めている事に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ