余裕の理由
アステリアと三人の男爵達は――
セリアの言葉に、表情を崩さなかった。
だが。内心では、確かな動揺が広がっていた。
「皆も疲れているでしょ?」
セリアは、あくまで軽く言う。
「なら、この領地で少しの間、のんびりしてて」
まるで、ただの休暇の提案。
だが――
「……」
誰も、それをそのまま受け取らない。
「……姉さん」
アステリアが口を開く。
「それって――」
少し考え、言葉を選ぶ。
「領地に戻らず、ここに居ろって事だろ?」
セリアは、何も言わない。
だが、その沈黙が答えだった。
「……まあ」
アステリアは肩をすくめる。
「流れで分かるがな」
軽く笑う。だが、その目は笑っていない。
「いいじゃねぇか」
わざとらしく明るく言う。
「少しは、のんびりしようや」
視線を周囲に向ける。
「俺達だって、最近は忙しかったしな」
「……」
男爵達は、短く頷いた。
「……そうだな」
「一度、休むのも悪くない」
表向きは、同意。
全員、同じ事を考えていた。
……これは、明らかに立場が、変わる。
王都から離れ。
セリアの元に集まり。そのまま留まる。
それは――
「……反旗と見られても、おかしくないな」
誰にも聞こえないほどの小さな声。
それでも。
「……だが」
アステリアは、セリアを見る。
「なんだ、この余裕は」
焦りが無い。迷いも無い。
全てを見越しているような――
そんな空気。
「……何か、見えてるな」
ぽつりと呟く。
セリアは、何も語らない。ただ静かに、次を待っている。嵐の前の静けさのように。
その余裕の意味を――まだ誰も、正しく理解していなかった。




