主導権の所在
セリアの元に――アステリア、そして三名の男爵が集まっていた。
部屋の空気は、重い。
「……あらあら」
セリアが軽く肩をすくめる。
「皆さん、怖い顔をしてるわね」
場違いなほど軽い声――誰も笑わない。
「……姉さん」
アステリアが口を開く。
「撤収ってのは……まあ、気持ちは分かるが」
言葉を選ぶ。
「……反乱とまではいかねぇが」
一拍。
「大丈夫なのか?」
率直な問い。
「大丈夫よ」
セリアはあっさり答えた。
「今のところ、王都からは何も言ってこないでしょ?」
「……まあ、そうだが」
アステリアは腕を組む。納得しきれてはいない。
「王には悪いけど」
セリアの声が、少しだけ低くなる。
「問題は、あの人がどこまで“やる気”か」
視線が鋭くなる。
「それに――」
一拍。
「一番厄介なのは、上層部よ」
男爵達が静かに頷く。
「力量も無いくせに、口だけは出す」
「……違いねぇ」
アステリアが苦く笑う。
「粛正、とまでは言わないけど」
セリアは続ける。
「排除するかどうか」
静かな言葉だが――意味は重い。
「……そうだな」
誰かが呟く。
場の空気が、一段深く沈む。
その時、一人の男爵が口を開いた。
「しかし――」
視線がセリアへ向く。
「反乱軍が、この隙に攻め込む可能性は?」
当然の懸念。
「それは無いわ」
セリアは即答した。
「私達がいなくなった事を、相手は知らない」
一拍。
「情報は、まだ届いていない」
だから――
「動かない」
「……なるほど」
男爵が頷く。
納得はできるが完全ではない。
「後は」
セリアがゆっくりと息を吐く。
「王都側から、どんな返事が来るか」
視線が全員を見渡す。
「それ次第ね」
誰も、すぐには言葉を返さなかった。
今、決めるべき事はまだ先。
主導権は、確実にここに移りつつあった。




