引き戻す判断
「……は?」
報告書を受け取ったセリアの手が、わずかに止まった。
「……少数とはいえ、打って出た?」
目を通すまでもない。
「……あれだけ言ったのに」
小さく呟く。結果は――
「読むまでもないわね」
視線が落ちる。被害、混乱、後退。
「……当然の結果よ」
ため息が漏れる。
「これは……」
ゆっくりと顔を上げる。
「いよいよ、かしらね」
軽い失敗ではない。
流れが、悪い方向に傾き始めている。
「メイヤ」
「ん?」
「アステリアに連絡」
短く、だが強い声。
「一度、こちらに戻ってもらう」
「……全員?」
「ええ」
迷いは無い。
「配下ごと、全員引き上げ」
一拍。
「命令として出して」
「了解」
メイヤはすぐに動く。
「……本来なら」
セリアは小さく呟く。
「私が指示する立場じゃないんだけど」
王都軍の人事。
本来は干渉すべきではない。
だが――
「このままじゃ、崩れる」
静かな確信。
「……一度、全員で話さないと」
方針がバラバラのままでは、持たない。
「エドラン領主は……どう考えてるのかしら」
ぽつりと呟く。味方ではある。
だが、立場は違う。
「……温度差があるなら、そこも詰めないとね」
問題は、一つじゃない。
「はぁ……」
大きく息を吐く。疲れではない。
「……面倒ね」
その目は、もう次を見ていた。
「放っておく気は、ないわよ」
流れを引き戻すための一手が――動き始めていた。




