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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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拙速

「――決定だ」


総指揮官の声が、会議室に響いた。


「先遣隊を出す。反乱軍を押し、状況を確認する」


「ですが――」


誰かが口を開きかける。


「大規模な追撃ではない」


言葉を被せる。


「限定的な前進だ。問題はない」


その一言で、議論は打ち切られた。


「……はぁ」


アステリアは小さく息を吐いた。


「“限定的”ね」


嫌な予感しかしない。セリア姉さんがここに居れば。あれだけ釘を刺していたのに。居なくなった途端に、これか。


だが、命令は命令。


「動くしかない、か」


短く呟き、踵を返す。


王都外縁。


再編の終わらぬ部隊が、前へと押し出される。


「前進!」


号令と共に、足並みが揃わないまま動き出す。


「隊列、整えろ!」


「間隔が広い!」


現場は、すでに乱れていた。


「……遅い」


アステリアが低く呟く。


「そして、甘い」


前方の偵察が足りない。側面の警戒も薄い。


「……来るぞ」


その瞬間。


ガサッ――


森の縁が、揺れた。


「敵影!」


叫びが上がる。


次の瞬間――


「撃てぇ!!」


ドンッ!!


横からの一斉射。


「ぐあっ!」


「側面だ!?」


隊列が一気に崩れる。


「落ち着け! 整え――」


ドンッ!!


さらに撃ち込まれる。


「くそっ……!」


完全に、崩された。


「前に出るな! 固めろ!」


アステリアの声が飛ぶ。


「盾を上げろ! 散るな!」


現場が、ようやく反応する。

バラバラだった動きが、少しずつ収束する。


「……遅いが、まだ間に合う」


歯を食いしばる。


反乱軍は、深追いしない。数発の打撃。

それだけで、すぐに引く。


「……引いたか」


アステリアが目を細める。


「目的は、削り」


その通りだった。

短時間で、確実に損害を与え――離脱。


「……やられたな」


静かに呟く。


「被害は!?」


「負傷、多数! 戦列維持が限界です!」


「……撤退」


即断だった。


「これ以上は、持たない」


王都へ戻る隊列。その空気は、重い。


「……だから言っただろ」


アステリアは誰にも聞こえない声で呟く。


「攻める段階じゃない」


だが――


その現実は、もう結果として出てしまった。

今回の損害は、壊滅ではない。


だが。


「……確実に、削られた」


そして何より――


「士気に響く」


一度の失敗。だが、その影響は小さくない。

王都は、まだ理解していない。


この戦いが、“勢い”でどうにかなる段階ではない事を。

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