現実と判断
その頃――王都。
軍の上層部は、今後の対応を巡って議論を続けていた。
「追撃の機だ」
「いや、再編を優先すべきだ」
声が飛び交う。
だが、その様子を少し離れた位置から見ていたアステリアは――
「……」
何も言わず、ただ静かに観察していた。
そして、内心で呟く。
「……こりゃ、ダメだな」
短い結論。
王都の軍は、まだ再編の最中だった。
部隊は分断され、再配置が進みきっていない。
「練度も、足りていない」
実際に戦場を見てきた者として、それは明白だった。
さらに――
「指揮官も、か」
若い顔ぶれが多い。
経験の浅い者が、前に出ている。
「ベテランは……分かっているな」
慎重な意見。追撃への反対。
それは、正しい判断だ。
だが。
「新人は、勢いだけだ」
声は大きい。だが中身が伴っていない。
「……相手を、甘く見ている」
ぽつりと呟く。
反乱軍。確かに“私兵”ではある。
だが――
「練度は、高い」
実戦を重ねた動き。統率も、まだ残っている。
「……楽な相手じゃない」
それは、戦った者にしか分からない現実。
「……あれが無ければ」
ふと、視線を落とす。
「ここは、持たなかった」
セリア達が持ち込んだ武器。
あの火力があったからこそ――
王都は守れた。
「……それなのに」
再び視線を上げる。議論は続いている。
「対応を検討、ね」
わずかに口元が歪む。
「笑わせる……やる事は一つだろ」
小さく呟く。誰に向けるでもなく。
「守りに徹する」
それが、最も確実。
「今の戦力で攻めるなど――」
考えるまでもない。
「愚策だ」
静かな断定。
だが。その“当たり前”が、この場では通っていなかった。




