ポンポンの可能性
「……いや、ちょっと待って」
メイヤは腕を組んだまま、目の前の車両を睨む。
ポン、ポン、ポン……
規則的に鳴る、あの音。
「まさか……ポンポン船のエンジン?」
信じられないものを見る顔。
「それを……車両に?」
あり得ない。普通はやらない。
でも――
「……出来てるからなぁ」
目の前で動いている以上、否定のしようがない。煙を吐き、一定のリズムで進むその姿。
どう見ても、“動いている”。
「……はぁ」
思わず息が漏れる。
「ほんと、やるよねぇ……あいつら」
呆れ半分。感心半分。
「でも」
少しだけ、目の色が変わる。
「これ、普及したら――」
視線が遠くを見る。
「かなり便利になるわね」
荷馬車に頼らない輸送。
人力でも、馬力でもない。
「……物流、変わるわよこれ」
ぽつりと呟く。物が動く速さが変わる。
量も変わる。
つまり――
「世界、ちょっと変わるやつだこれ」
小さく笑う。
「いいじゃん」
素直な評価だった。
その少し離れた場所。同じ車両を、静かに見つめる影があった。セリアだった。
「……」
何も言わず、ただ観察している。
その視線は――メイヤとはまた違う方向を見ていた。
可能性と、影響と、その先。
全てを測るように。
ポン、ポン、ポン……
軽い音が、静かに響き続けていた。
「……面白い物、作ったわね」
セリアは小さく呟いた。
開発棟の連中らしい、とでも言うべきか。
「まだ細かい報告書は回ってきていないけど」
視線は、走る車両から外れない。
観察する。挙動、速度、音、煙。
全てを拾うように。
「……あれに兵を数名、乗せたら」
ぽつりと。
「かなりの機動力を持たせられるんじゃない?」
一気に思考が戦場へ飛ぶ。
荷馬車に頼らない移動。隊単位での高速展開。
「……速度は?」
「どれくらい持つのかしら」
「航続距離は?」
次々と疑問が浮かぶ。
だが同時に――
「使えるわね」
確信もある。
「これ、化けるわよ」
小さく息を吐く。
「……早く書類、回ってこないかしら」
珍しく、わずかに口元が緩む。
その表情は――はっきりと楽しんでいるものだった。




