変な音の正体
「……さて、と」
メイヤは軽く背伸びした。
「次は何しよっかな〜」
敷設は順調。人も回ってる。
つまり――
「私、今ちょっと暇よね?」
にやり、と笑う。
「……久しぶりに開発棟でも覗いてみるか」
ただし。
「あそこ、変人の巣窟だからなぁ……」
少しだけ顔をしかめる。
「……遠くからチラ見でいいや」
深入りは危険。経験上、間違いない。
歩きながら、ふと思い出す。
「そーいや……」
「農業車両に蒸気機関つけてたよね、あいつら」
発想としては面白い。
というか――
「目の付け所はいいんだよなぁ」
ちょっと感心する。
「そのうち車とか作り出しそう」
くすっと笑う。
……いや、普通にやりそうだな。
その時。
「ん?」
足が止まる。見慣れない影。
「あれ、何?」
確かに車両っぽい。でも――
「見たことないんだけど」
首を傾げる。その瞬間。
ポン、ポン、ポン……
「……は?」
耳に入ってきた音に、思考が止まる。
「なにこの音」
蒸気機関じゃない。軽い。変なリズム。
「……いや待って」
眉をひそめる。
「この音、どっかで……」
記憶を探る。昔。もっと昔。水の上。
子供の頃。
「……あ」
目が見開かれる。
「ポンポン船の音じゃん」
ぽつりと呟く。
そしてもう一度、目の前の“それ”を見る。
「……は?」
数秒、固まる。
「いやいやいや」
ツッコミが追いつかない。
「なんで陸でポンポン船走ってんの!?」
思わず声に出た。
「まさか……」
呆れ半分、笑い半分。
「そこまで再現したの?」
開発棟の方を見る。
「……やっぱあいつら、変人だわ」
でも。その口元は、完全に楽しそだった。




