次の布石
数時間後――
船は静かに、自領の港へと接岸した。
大きな音も無く、滑り込むように岸へ寄る。
「……着いたわね」
誰かが小さく呟く。
その横で、メイヤは腕を組みながら、海を眺めていた。
「……はぁ」
ゆっくりと息を吐く。
「こりゃ〜、長引きそうね」
戦場の空気は、もう分かっている。
一度で終わる類のものではない。
「まったく……」
肩をすくめる。
「私の老後生活、邪魔しないでほしいんだけど」
ぶつぶつと文句を言いながら、タラップを降りていく。
その足取りは軽いが――
状況の重さは、しっかり理解していた。
「……さて」
一方で、メイヤは既に次を見ていた。
机の上に広げられた地図。
領内、そして周辺地域。
指でなぞりながら、思考を巡らせる。
「領内は……かなり整ってきているわね」
物流、設備、拠点。
戦いの中でも、基盤は崩れていない。
むしろ――強くなっている。
「となると……次は」
視線が外へ向く。
「広げる段階ね」
この“便利な生活”。
それを、周囲へと波及させる。
だが――
「……耐えられるかしら」
ふと、立ち止まる。
「製造体制」
今は、武器生産へと大きく舵を切っている。
平時の供給とは、明らかに違う。
「……このまま拡張していい段階じゃないわね」
判断は慎重に。
「これは――相談が必要ね」
一人で決める領域ではない。
地図を閉じる。
「……次は、戦場の外」
静かに呟く。戦いは続く。
だが同時に――領地は、次の段階へ進もうとしていた。




