届かなかった決定打
「……」
セリアは、額に手を当てたまま動かなかった。
「……完全に統率を失っていれば」
ぽつりと漏れる。
そうであれば、話は単純だった。
王都側と連携し、そのまま追撃戦へ。
潰し切る事も、現実的だった。
だが――
「統率は、残っている」
静かに言う。
「しかも……数は、向こうが上」
一歩踏み出せば、どうなるか。
考えるまでもない。
「追う側が、不利になる」
それは、明白だった。
「……歯痒いわね」
小さく、吐き捨てる。勝っている。
戦術的には、間違いなく優位に立っている。
それでも――決め切れない。
「……仕方ないわね」
やがて、顔を上げる。迷いは消えていた。
「方針を変える」
一言で、空気が締まる。
「王都周辺の掃討戦に集中する」
無理に追わない。確実に、削る。
「残っている“芽”を、全て潰す」
それが今、できる最善。
「……反乱の芽を、完全に断つ機会は」
一拍。
「逃した」
認める。それが現実。
「王都軍の練度不足――」
視線がわずかに逸れる。
「痛いわね」
追撃に移れなかった理由。
そこが、分岐だった。
だが――
「嘆いても、仕方ない」
すぐに切り替える。
「やれる事をやるだけよ」
静かな声。
だが、その奥には確かな意思がある。
「……次で、詰める」
完全な勝利ではない。
だが――まだ、終わってはいない。
セリアは、アステリアを伴い――
反乱軍と交戦していた王都外縁の壁へと足を運んでいた。
「……ここね」
目の前に広がるのは、戦いの痕跡。
だが――
「激戦、というより……」
セリアはゆっくりと視線を巡らせる。
抉れた地面。
焼け焦げた痕。
散乱する装備。
「一方的、ね」
アステリアも静かに頷く。
「……ああ」
通常の戦闘でこうはならない。
ぶつかり合った形跡ではなく――
「叩き潰された跡だ」
ドォン、とでも言わんばかりの痕跡が、あちこちに残っている。
「……新兵器か」
アステリアの言葉に、セリアは肯定も否定もせず。ただ、もう一度周囲を見渡した。
「……威力は、十分すぎるわね」
一目で分かる。
この戦場では、“差”があった。
技量ではない。数でもない。
「……火力の差よ」
静かに言い切る。
その結果が――この光景だった。




