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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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静かな航路

「……全員、乗船完了」


リディアの報告に、セリアは小さく頷いた。


「了解。出すわ」


船はゆっくりと岸を離れ、沖合へと向かう。

軋む音と共に、水面を滑るように進み始めた。


「速度は抑えて」


「微速前進、維持します」


「ええ」


全速ではない。あえての減速。


「……休ませる時間は、必要よ」


短い戦闘だったとはいえ、張り詰めた状態は続いていた。

甲板の空気が、少しずつ緩む。

座り込む者、武器を置く者、目を閉じる者。

リディア隊の面々に、わずかな休息が与えられる。


船は、静かに王都へ向かっていた。

波は穏やかで、距離も遠くはない。


「……すぐに着くわね」


セリアは海を見つめながら呟く。

だが、その視線はどこか遠い。


「……」


思考が巡る。


補給基地の壊滅。

反乱軍の敗走。

王都側の動き。


だが――


「……情報が、足りない」


小さく息を吐く。

見えていない部分が、多すぎる。


「……到着後ね」


結論を切り替える。


「まずは情報収集に徹する」


不用意には動かない。

確実に、状況を掴む。

それが次の一手に繋がる。


「……焦る場面じゃない」


自分に言い聞かせるように呟き、目を閉じる。

船は静かに、進み続ける。

次の戦場へと。


ゆっくりと進んでいた船は――

完全に陽が昇った頃、王都の港へと接岸した。


「到着ね」


セリアが短く呟く。

無駄な動きはない。


「降りるわよ」


「了解」


リディアとメイヤが頷き、部隊と共に上陸する。

港は、慌ただしい空気に包まれていた。

負傷者の搬送、補給の再配分、慌ただしく行き交う兵達。

戦いは、まだ終わっていない。


「……いたわね」


視線の先。


「アステリア」


呼びかけに、相手も気付く。


「セリア……無事だったか」


「ええ」


短い確認。それだけで十分だった。


「状況は?」


セリアが本題に入る。


「……防衛は成功した」


アステリアが淡々と答える。


「反乱軍の攻撃は、全て防いだ」


「そう」


頷く。


「だが――」


わずかに間を置く。


「こちらの軍は練度が低い。追撃には移れなかった」


「……予想通りね」


セリアは静かに受け止める。


「崩し切れていない、という事ね」


「ああ」


アステリアは頷いた。


「反乱軍は散り散りにはなったが……完全には崩れていない」


「統率は?」


「失っていない」


短い答え。だが、その意味は重い。


「……厄介ね」


セリアが目を細める。


「補給は潰したのに、まだ形を保ってる」


「それだけの指揮官がいる、という事だろう」


「ええ」


三人の間に、短い沈黙が落ちる。

持ち寄った情報は、出揃った。

•王都側は、防衛に成功

•だが、追撃はできず

•反乱軍は、崩れきっていない


「……中途半端な状態ね」


セリアが呟く。


「どちらも、決め切れていない」


だからこそ――


「次で決まる」


視線が、自然と揃う。戦いは、まだ続いている。そして――次の一手が、全てを分ける。

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