足りない手
「……さて」
セリアは小さく息を吐き、こめかみに指を当てた。
「拠点の制圧は……できた」
視線の先には、押さえた補給拠点と、散り散りに逃げていく反乱軍の影。
だが――
「……追撃は、できない」
ぽつりと漏れる。火力はある。だが兵が足りない。船からの支援が届く範囲なら押し切れるが、それを外れれば――数で劣る。
「……数は、あちらが上」
敗走しているとはいえ、全てを狩り切るだけの余力は無い。無理に追えば、逆に崩される。
「ふぅ……」
一度、大きく息を吐く。
「この地域の制圧に重点を置くわ」
結論は早い。
「リディア!」
「はっ!」
「警戒を厳に。残敵の潜伏も考えなさい」
「了解!」
即座に動き出すリディア隊。
周囲の確認、配置の再整理、見張りの強化。
戦場は、“維持”の段階へと移る。
「……王都側とは、連絡を取りたいところだけど」
セリアは空を見上げる。
「今、伝令を出すのは……危険すぎるわね」
敗走した敵が、まだ周囲に散っている。
どこで捕まるか分からない。
「……焦る場面じゃない」
自分に言い聞かせるように呟く。
「ここは――数時間、様子見」
情報が揃うのを待つ。無理に動かない。
それが、今の最善。
「……次は、どう動くか」
静かな海風の中で、セリアは思考を巡らせていた。




