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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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接近

「伝令!」


夜明け前の空気を裂いて、声が飛び込む。


「王都より先遣隊、出撃を確認!こちらへ向け進軍中!」


「……来たか」


セリアは短く呟いた。


「規模は?」


「中隊規模! 偵察を兼ねた先遣と思われます!」


「そう」


視線を海から陸へ移す。


「思ったより早いわね」


一拍。


「……そして、遅い」


「遅い?」


リディアが眉をひそめる。


「ええ」


セリアは頷いた。


「この動きは、“正確な情報”に基づいたものじゃない」


「……」


「確認に来ている。つまり――」


視線が鋭くなる。


「まだ何も知らない」


その時。


「報告!」


別の伝令が駆け込んでくる。


「内陸側より大規模な移動を確認!反乱軍と思われます!」


「規模は!?」


「……多数!集結している模様!」


空気が、一変する。


「……やっぱり来たわね」


セリアが小さく息を吐く。


「補給を失った以上、動くしかない」


「王都へ、ですか?」


「ええ」


その途中――


「ここを通る」


静かに断言する。


「……挟まれますね」


リディアが低く言う。


前方には王都の先遣隊。

後方からは反乱軍の主力。


「普通なら、そうね」


セリアはわずかに笑った。


「でも今回は違う」


「?」


「両方とも、“状況を知らない”」


その言葉に、リディアの目が細まる。


「つまり――」


「ええ」


セリアは頷く。


「噛み合わない」


一歩、前へ出る。


「なら、こちらが合わせるだけよ」


「……どう動きますか」


短い問い。それに対して――


「まず、王都の先遣を止める」


即答だった。


「敵ではない。このまま進ませれば混乱する」


「……確かに」


「撃たずに止める。止まらなければ――」


一瞬だけ、言葉が切れる。


「その時は、仕方ないわね」


静かな声。その意味は重い。


「反乱軍は?」


「叩く」


迷いは無い。


「補給を失った軍は脆い。今なら崩せる」


そして。


「両方が接触する前に、決着をつける」


「……間に合いますか」


リディアの問いに、


セリアはわずかに笑った。


「間に合わせるのよ」


その時――遠く。かすかな振動が、大地を伝う。


「……来る」


誰かが呟く。


二つの軍勢が、同時に近づいてくる。

まだ互いを知らないまま。


そして――その中央にいるのは。


「準備」


セリアが告げる。


「ここが、分岐点よ」


戦場は再び、動き出そうとしていた。

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