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「……ふぅ」
セリアは小さく息を吐いた。
張り詰めていた空気を、一度だけ解く。
「この辺りの制圧は……完了ね」
視線は、静まりつつある海岸。
崩れた陣地、積まれた物資、拘束されていく兵。
「この補給拠点を潰した」
独り言のように呟く。
「反乱には、これで決定打に近いはずだけど……」
すぐに目を細めた。
「相手は、どう出るかしら」
普通なら――引く。
ここで戦力を失えば、立て直すしかない。
「……後が無い連中ね」
声がわずかに低くなる。
「何をするか、読めない」
一拍。
「王都側の方は――どう動くかしら」
海の向こうを見据える。
「ここの情報が届くには、まだ時間が掛かる」
だからこそ――
「動くとしたら、その後」
先を読む。それが、今やるべき事。
「メイヤ」
「ん?」
「船の戦闘員、半数を休ませて」
「了解」
即答だった。
「交代で休憩入らせるのよ」
「解ったわ!」
そして。
「リディア隊には、周囲の警戒を厳にと伝えて頂戴」
「はっ!」
返事と共に、伝令が走る。
戦いは終わった。まだ、終わってはいない。
静かな海の上で、セリアは次の一手を思考していた。
その頃――
遠く離れた王都。
フェルナード方面へと伸びる街道の先を、夜の見張りが見据えていた。
「……あれは」
暗闇の地平に、小さな赤い点が揺れている。
「かなりの距離ですが……赤く……炎、ですね」
「反乱軍か?」
隣の兵が低く呟く。すぐに眉をひそめた。
「しかし妙だな。わざわざ目印になるような真似をするか?」
「フェルナード軍……ですかね?」
「いや」
即座に否定する。
「報告では、数日前に連絡が届いている筈だが……」
視線は赤い光から外さない。
「だがそれなら距離が合わん。準備を整え、急行したとしても……まだ出たばかりの筈だ」
「……そう、ですよね」
一瞬の沈黙。
揺れる炎だけが、夜の向こうで存在を主張している。
「……しかし、一体……?」
「分からん」
短く切り捨てる。
「警戒を厳に」
「はっ」
王都はまだ、何も知らないが確実に、何かが近づいていた。




