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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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動き出した布陣

各々各自、準備のために動き続けていた。

気が付けば、あっという間に二日が過ぎていた。


突貫作業ではあったが、あきつ丸には必要な武装が一通り施されている。

艦首と舷側には兵装、船倉には武器と予備弾、食料、そして陸上行動用の荷馬車まで積み込まれ、出撃準備はすでに整っていた。


今回の総指揮官はセリアだ。

彼女は迷いなくあきつ丸に乗り込み、艦上で指示を飛ばしていた。


メイヤも当然のように乗艦している。

この船の癖も、限界も、誰よりも把握しているのは彼女だった。


艦内の簡易作戦室で、

セリア、リディア、メイヤの三人が向かい合う。


「今回の作戦を説明するわ」


セリアが地図を広げる。


「王都の港へ向かうわけじゃない。

 向かうのは――王都と旧ガリオン領の間」


指で示された地点は、街道と海岸線が最も近づく場所だった。


「ここに鎮座している敵陣を撃滅する。

それが第一段階よ」


リディアが地図を覗き込み、短く頷く。


「海から上陸、街道を叩く形か」


「そう。上陸地点はこの辺りが有力」


セリアはおおよその範囲をなぞる。


「ただし、正確な位置はまだ確定じゃない。

だから――」


「先行偵察、ですね」


メイヤが即座に言葉を継ぐ。


「ええ。まずは小型高速船を出す。うちの“影”に偵察させて、敵陣と地形を確認する」


偵察後、再合流。

その情報を元に、あきつ丸が動く。


「それから上陸」


一瞬の沈黙。


メイヤは地図と海岸線を見比べ、ぽつりと呟いた。


「……これって、逆上陸作戦ってやつかな?」


「結果的には、そうなるわね」


セリアは淡々と答える。


「相手は街道封鎖を狙って陣を敷いている。

なら、正面から行く理由はないわ」


リディアが口元を歪める。


「挟まれるとは思ってない、って顔をしてる陣地だと助かる」


「思ってなくても、させるわ」


セリアは地図を畳み、視線を二人に向けた。


「今回は速さと位置取りがすべて。無理はしない。でも、躊躇もしない」


その言葉に、二人は黙って頷く。


あきつ丸の外では、出港準備の音が続いている。

歯車はすでに噛み合い、後戻りは出来ない。


戦は、もう始まっていた。



場所は、王都とガリオン領のちょうど中間に位置する補給場。

街道沿いに設けられた仮設陣地は、最低限の柵と天幕だけで構成されていた。


「ふぁ〜あ……」


焚き火のそばで、兵の一人が大きく欠伸をする。


「しっかし寒いな。ここ」


「だな。でもまあ、補給部隊配属でよかったぜ」


もう一人が手を擦りながら応じる。


「前線よりはマシだ。前も後ろも安全って話だしな」


「それにしてもさ」


欠伸をした兵が、ふと疑問を口にする。


「街道封鎖って聞いてたけどよ。部隊を王都方面とガリオン方面、二箇所に分けて大丈夫なのか?」


「ああ? 当たり前だろ」


焚き火をつつきながら、相手は気にも留めない様子で言う。


「そのための封鎖なんだからよ。こっちの部隊は、ここに張り付いて補給を守ってりゃいい」


「へぇ」


「本隊が王都を陥落させりゃ、それでおしまいさ」


当然の結論、という口調だった。


「なるほどな」


欠伸をした兵は、肩をすくめる。


「楽でいいや。寒いのは嫌だけど、命の危険はなさそうだ」


二人はそれ以上話さず、焚き火を囲んで黙り込む。


夜の補給場は静かだった。

見張りも最低限、警戒も形だけ。


――誰一人として、

この場所が“狙われる側”になるとは思っていなかった。


海の闇の向こうで、静かに距離を詰める影の存在を、知る由もなく。

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