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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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静かに下された指示

セリアは、迷いなく筆を走らせた。


まず一通。

宛先は――旧ガリオン領、暫定統治責任者。


「敵と思しき陣地の正確な位置、規模、街道との関係を至急調査されたし。情報は直接、フェルナードへ」


封を閉じると、次は人を呼ぶ。


「リディア。メイヤ。来てちょうだい」


ほどなくして二人が執務室に姿を見せる。

セリアは簡潔だった。


「リディア。出撃準備を。武装は重装。想定は街道封鎖陣地への牽制、もしくは排除」


「了解しました」


一切の迷いもなく、リディアは頷く。視線が、次にメイヤへ向く。


「メイヤ。あきつ丸に武装の取り付けを指示して」


その言葉に、メイヤの肩がわずかに落ちた。

……やっぱ、戦いになるのか。


心の中で、そう呟く。正直、ゲンナリする。でも――だからといって、手を抜く訳にはいかない。


「了解……です」


メイヤは気持ちを切り替えるように、小さく息を吐いた。


「あきつ丸は前の船より大型。前部にバリスタ二基、前回取り外した物を

それと――竹筒ロケット弾も積みます」


「予備も?」


セリアが確認すると、メイヤは即座に頷く。


「はい。艦が大きい分、積載には余裕があります。予備ロケット弾も載せられます」


戦いは嫌いだ。でも、やると決まった以上――中途半端は一番嫌いだ。


「……やるなら、きっちりやります」


そう呟くメイヤの目は、もう技術者のそれに戻っていた。


セリアは、二人を見送ると、地図に視線を戻す。

情報を集め、準備を整え、こちらから焦って動かない。


――静かに、しかし確実に。


フェルナード領は、音もなく戦支度を整え始めていた。



同時刻――王都。


近衛の詰所、その一角で。

木箱が静かに並べられていた。


蓋を開けたエドラン軍の士官が、眉をひそめる。


「……これは?」


中に収められていたのは、見慣れた弓とは明らかに異なる形状の武器だった。


「クロスボウ……とか言っていた物だな?」


「はい。そうです」


近衛隊長は、淡々と頷く。


「近衛より、エドラン軍へ供与致します。

本日より直ちに訓練を開始して下さい」


「……解った」


受け取る側も、余計な詮索はしない。

この時期に渡される、という事自体が答えだった。


だが――


「それと……」


近衛隊長は、声を落とし、もう一つの箱へと手を伸ばす。


「……新型兵器も、同時に」


「新型?兵器?」


思わず聞き返したエドラン軍士官に、近衛隊長は小さく息を整えた。


「はい。使用方法については――私から直接、説明させて頂きます」


一瞬の沈黙。


「兵の一部を集めて下さい。信頼できる者だけで結構です」


その言葉の重さを、エドラン軍士官は即座に理解した。


「……解った」


命令ではない。

だが、拒否する余地もない。


箱の中身は、まだ伏せられたまま。


王都でもまた、表には出ない“切り札”が、静かに動き出していた。

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