昼帰りの英雄(誤解)
「……ん。うーん……?」
柔らかい感触。天井。
見覚えのない――いや、王城の客人室だ。
「……ベットの上?」
ゆっくりと記憶を辿る。
「……あー……飲みすぎたか……」
王とエドラン。気づけば飲み比べ。
笑って、愚痴って、もう一杯。
「……二日酔いだ……」
頭を押さえつつ、跳ね起きる。
「――って、やべ!もう昼過ぎか!?」
慌てて従者を呼び、身支度もそこそこに部屋を飛び出す。
「うぅ……気持ち悪……」
ふらふらしながら港へ向かう途中――
「おう」
「……あ」
近衛隊長だった。
「例の物は引き取ったぞ」
「頼んだぞ!」
それだけで終わるかと思いきや、隊長は腕を組んで続ける。
「しかしアステリア」
「ん?」
「そんなに困ってたなら、早めに相談しろよ?」
「……?」
「お前の部下がな。泣いて喜んでたぞ?」
「……は?」
「余り部下に負担を掛けるなよ?」
「……あ、あー……まあな?」
よく分からないまま、話は締められる。
「じゃあな」
「……お、おう……」
去っていく背中を見送りながら、首を傾げる。
「……泣いて喜んでた?何の話だ……?」
そのまま港へ。
「おーい!おめーら!帰ったぞー!」
次の瞬間。
「……あねさん……!」
部下の一人が、シクシクと泣き出した。
「……は?」
「良いんですよ……!」
「おめでとうございます!!」
「……はぁ?」
「そんな肌艶良く帰って来て!お祝いでもしますか!?」
「……何のだよ!?」
すると、別の部下がニヤニヤしながら口を挟む。
「まあまあ、あねさん」
「?」
「お互いフリーですし!」
「……は?」
「近衛隊長、中々良いやつでイケメンですし!」
「はぁぁ!?」
さらに畳み掛けるように――
「まさか……朝帰りどころか昼帰り!!」
「――ブッ!!」
「朝、近衛隊長が例の物取りに来た時ですよ!」
「?」
「あねさんの事聞いたら!」
「?」
「まだベットで寝てるって言ってたんで!!」
「ばっか!!」
思わず叫ぶ。
「そんなんじゃねー!!」
「そんな照れなくても!」
「この――!!」
アステリアの拳が、容赦なく一人の頭に落ちた。
「痛ぇ!!」
「勝手な想像すんな!!」
しかし――
部下たちの顔は、どこか嬉しそうで。
アステリアは頭を抱えた。
誤解だけが、今日も元気に量産されていた。




