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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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冬でも溶けない約束

「メイヤ?」


「はい?お母様?」


「……冬よ!」


「はい??」


「んーもー!アイスっての、まだなの?」


「あー!」


メイヤは、ぽんと手を打った。


「すっかり寒くて忘れてたわ……

研究だの船だの、色々ありすぎて」


「言い訳はいいから」


「は、はい……」


メイヤは苦笑しつつ、腕を組む。


「じゃあ試しに作ってみますか」


バニラエッセンスが無いから、それっぽい物にしかならないと思うけど。。


厨房。


「作り方は簡単なの」


メイヤは手早く説明し始める。


「まず、生クリームと牛乳を混ぜる。

そこに砂糖を加えて、しっかり溶かす」


「ふむふむ」


「次に卵。黄身だけ使って、軽く火を入れてとろみを付けるの。これは滑らかさの為ね」


「なるほど」


「後は、香り付け。本当ならバニラだけど……今回は代用品」


「で?」


「それを冷やしながら、ひたすら混ぜる。

凍らせては混ぜ、凍らせては混ぜ。

氷の粒を細かくするのがコツよ」


「……手間ね」


「そう。だから“贅沢品”なの」


しばらくして。


「これよ。……如何ですか?お母様」


白く、なめらかなそれを差し出す。


「へー……」


スプーンが入る。


「……あら」


もう一口。


「滑らかな食感ね」


「でしょう?」


「美味しいわ」


「良かった」


メイヤは肩をすくめる。


「本当は、もっと美味しいんだけどね。

バニラも無いし、乳脂肪も足りないし。

無い物は、流石に仕方ないわ」


「ふふ」


母は、もう一口すくいながら言った。


「でもね」


「?」


「冬に食べるアイスも、悪くないわ」


「……でしょう?」


厨房の窓の外では、静かに雪が降っている。


冷たい季節に、冷たい甘さ。

それはきっと、この領地らしい“贅沢”だった。


お母様もお姉ちゃんも、どうやら完全にアイスにハマったみたい。


……みたい、じゃないわね。

確実にハマった。


朝は「昨日の残りある?」


昼は「少しだけよ?」


夜は「寝る前に一口!」


――多い。明らかに多い。


流石に見かねて、メイヤは宣言した。


「はい。アイスは三日に一回です」


「えー」


「なんでよ!」


即座にブーイング。


「冬だから氷室使わないし、別にいいじゃない!」


「そうよそうよ!」


「関係あります!」


メイヤは腕を組んで、ぴしっと言い切る。


「過度の甘味は禁止!身体壊しちゃうでしょう!」


「……」


「……むぅ」


二人とも渋々黙るが、顔には納得していないのが丸分かりだ。


「まったく……」


メイヤは小さくため息をついた。


「新しい物が出来る度に、これだもの」


甘い物は、心を豊かにする。

でも、行き過ぎれば毒にもなる。


それを分かっているからこそ――


「作る側が、ちゃんと止めないとね」


そう呟きながら、その背後で。


「……三日後、いつ?」


「数えたら今日入れて?」


ひそひそ相談する声が聞こえたが――

聞こえなかった事にしておいた。


どうせ、また怒るんだもの!


静かな冬の夜。アイスと一緒に

この家の騒がしさも、しっかり凍って――

いや、全然凍ってなかった。

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