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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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監視対象、増殖中

「たったいちょー!!」


「無理!」


「まだ何も言ってないですけど!?」


「パナー、お前が来ると面倒ごとが増える」


「失礼すぎません!?」


パナーは一歩前に出て、声を潜めた。


「あの変人……見ましたよね?」


「あー。見た見た。空飛んでたな。すげーよな?」


「すげーよな?じゃないです!!」


パナーは頭を抱えた。


「メイヤ様だけでも常時監視が大変なのに!

そこに変人がプラスされて、もう手が回りません!!」


「んー」


隊長は欠伸混じりに答える。


「あいつは、ほっとけ」


「……へ?」


「ほっとけ?」


パナーは固まった。


「何だ?お前、気付いてなかったのか?」


「何にです?」


「あの変人――」


隊長は指を立てる。


「新人影三名が、交代で張り付いてる」


「……へ?」


「この領の影だよ。まあ、実地訓練兼ねてな」


「……はぁ〜……」


一気に力が抜けた。


「じゃあ……いいですね……」


「まあな」


隊長は続けて、引き出しから一枚の書類を取り出した。


「それと、一応これ」


「……何です?」


「奥様にも渡してあるが、同じ物だ」


「個人情報じゃないですか……」


「まあ、見てみー」


パナーは目を落とし――次の瞬間、目を見開いた。


「なっ!?」


「学年トップ。学科成績はな」


「武術は……まあ普通ですね」


「変人だが、喧嘩屋じゃない」


パナーは書類の下半分を指さす。


「……また、ここ黒塗りですけど」


「やばい系ですか?」


「さー?」


隊長は肩をすくめた。


「でもな。調べた限り、裏は無さそうだ」


「……そうですか」


パナーは書類を閉じ、深く息を吐いた。


新人影三名で監視……それでも足りるのか……?


パナーの不安をよそに監視対象は今日も――何かを作り始めている。


しかも、止める気など最初から無い顔で。



さて――

エレキッテルの二種類が、どうやら完成したようだった。


「……ふふ」


メイヤは、資料から顔を上げる。


「登録通りのサイズと……それを四倍くらいに拡張した物、ね」


机の上には簡易な完成報告。


「どういう反応を示すか……楽しみだわ」


ちらりと横を見る。


「――あの変人も居るらしいし」


ミュネが一瞬、嫌な顔をした。


「……見に行かれるのですか?」


「行くに決まってるでしょう」


メイヤは立ち上がる。


「完成品を前にして、放っておけるわけがないじゃない」



実験棟。


そこには、二つの箱が並べられていた。


一つは、登録資料そのままの大きさ。

もう一つは、それを単純に四倍ほどに拡張した箱。


上部からは、例の――細い針金が伸びている。


「……さて」


メイヤは腕を組んだ。


「どうなるかしら?」


その時だった。


「おおっ!」


ロット爺さんが、目を輝かせて言った。


「これなぁ、夜とか真っ暗な所で見るとよ」


「?」


「この上の針金から、ほのーっと光るんじゃ」


「……は?」


「しかもな、触ると――」


ロットは、誇らしげに指を立てる。


「ピリッと来る!」


「……」


メイヤの視線が、ゆっくりロットへ向いた。


「……ロットさん」


「ん?」


「勝手に触ったのね?」


「そりゃあ、まあ……気になってのう?」


メイヤは額に手を当てた。


「……実験対象に、実験者が先に触るとか」


「いやぁ、でも危険そうでは無かったし――」


「危険かどうかを判断するのが、実験なのよ」


ロットは、ははっと笑った。


「じゃが、面白い物じゃろ?」


「……ええ」


メイヤは、もう一度箱を見る。


光る針金。触れると走る刺激。


「とても、ね」


その場の空気が、静かに――

しかし確実に、次の段階へ進もうとしていた。

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