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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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天才は空から名乗る

「――設計者なら、領主館に居るわよ!!」


塔の下から、メイヤが叫んだ。


一拍。


そして、塔の上から楽しそうな声が返ってくる。


「ほぉほぉ〜!」


外壁の縁に立った猫族の女性が、ひょいと身体を乗り出した。


「あっちにある、横長の家か?」


「そうよ!!」


メイヤは必死だ。


「だからさっさと降りて来なさい!!」


一瞬の沈黙。次の瞬間。


「了解!」


猫族の女性は、胸を張って叫んだ。


「この天才、奇術師――

リュミエル・フェーン!!

設計者に会いに行くぜ!!」


そう言い残し――

塔の天辺から、飛び降りた。


「――――っ!?」


見ていた者たちが、一斉に悲鳴を上げる。


「きゃーーーっ!!」


思わず目を逸らす者。耳を塞ぐ者。

メイヤは、声も出なかった。


……終わった!


だが。


「はっはっはっはーー!!」


――空から、笑い声が落ちてくる。


「……え?」


恐る恐る、皆が再び空を見上げた。

そこには。大きく開いた、見慣れぬ布。

空気を抱え込み、ふわり、ふわりと揺れながら――


「……浮いてる?」


「空を……飛んでるぞ……?」


「何だあれ……!?」


メイヤは目を疑った。


……落下傘!?な、何でそんな物を!?


風を掴み、リュミエルの身体はゆっくりと流れていく。


――向かう先は。領主館。


そして。ひらひら、ひらひら。

空から、紙片が舞い始めた。


「……紙?」


拾い上げた誰かが、声を上げる。


「な、何て書いてある……?」


そこには、堂々と。


天才奇術師

リュミエル・フェーン

参上!!


「……」


領都が、爆発した。


「何だ今の!?」


「空から人が降ってきたぞ!?」


「紙が!紙が降ってる!!」


市場の中央から領主館の窓辺から――

それぞれが、同じ空を見上げていた。


ミュネは呆然と。

リディアは口を半開きに。

アステリアは、静かに目を細め。


そして。


セリアは、遠くからそれを見て、ふっと笑った。


「面白そうなのが……来たわね」


一方。メイヤは、頭を抱えた。


「……呼んだのは私だけど、災害級の人材が来たんだけど……」


空から降り立つ天才奇術師。


領地の常識は――

また一つ、軽々と踏み越えられた。



落下傘は領主館前の広場へと、ふわりと降りた。

着地と同時に、リュミエル・フェーンは軽く膝を曲げ、くるりと一回転。

何事もなかったかのように立ち上がる。


次の瞬間。


「よし!!」


声が、領主館前に響き渡った。


「さっきの塔の設計者か――メイヤって奴を出せ!!」


……。


一拍。


その場に居た全員の動きが止まった。


「……メイヤ?」


「今、メイヤって言ったか?」


「え、あの……?」


ざわり、と空気が揺れる。

即座に動いたのは、リディアだった。


「警備隊!確保!!」


影のように踏み込み、次の瞬間には――

リュミエルの背後に回り、腕を取る。


「おおっ!?速ぇ!!」


驚きの声を上げながらも、リュミエルはどこか楽しそうだ。


「ほぉ〜、また警備隊か!」


「動くな」


低く、しかし有無を言わせぬ声。

アステリアもすでに到着していた。

周囲を見渡し、状況を瞬時に把握する。


「……やっぱり、原因はこの人か」


その視線の先。

領主館の扉が開き、ゆっくりと姿を現したのは――


領主本人。そして、その一歩後ろに。


「……」


腕を組み、静かに立つセリア。

領主館前の空気が、ぴんと張り詰めた。


「なるほど」


セリアは、リュミエルを一瞥し、小さく息を吐く。


「これが“天才奇術師”ね」


「おっ?」


リュミエルは拘束されたまま、目を輝かせる。


「アンタ、只者じゃねぇな!」


その瞬間――


「……はぁ……」


場違いなほど、疲れ切った溜め息が聞こえた。


「何で……こうなるのよ……」


人混みを割って、メイヤとミュネがようやく到着する。


その姿を見た瞬間。


リュミエルの目が、獲物を見つけた猫のように、細く光った。


「――あ」


「来たな」


「お前だな?」


拘束されたまま、満面の笑みで叫ぶ。


「メイヤ!!この領地の塔を設計した奴!!」


一斉に、視線がメイヤに集まった。

メイヤは、額を押さえながら。


「……ええ、そうだけど」


……最悪の出会い方をした気しかしない。。


リュミエル・フェーン。

天才奇術師と設計者。


――運命の歯車が、今、真正面から噛み合おうとしていた。

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