好奇心は塔を登る
――王都で噂には聞いていた。
「ここは、すげー領地だ」ってな。
――想像以上だな……
猫族の女性は、領都を歩きながら尻尾を小刻みに揺らしていた。
人口は王都よりずっと少ねぇ……が。
整然と区画された街路。
無駄のない建物配置。
人と荷が自然に流れる導線。
……頭が良い奴が設計してる。
さらに視線は外れへ向く。
田畑に……ガラス張り?は?
陽光を反射する不思議な建物。
温室?いや、用途が複数ある?な……
噴水……?いや、形が変だ。水量制御?圧?
何だあれ……何の為に“複数”ある?
視線は自然と上へ向く。
塔……
あそこと……港にも?ははっ!
「理想的じゃねーか……!」
思わず声が漏れた。
情報、制御、監視、換気……用途が一つじゃねぇ。全部“仕組み”だ!こんな領地、初めて見たぞ……!
――そして。
「ここだな」
猫族の女性は、迷いなく中央の塔へ辿り着いていた。
その頃。
「……いた」
メイヤとミュネ、そして警備隊が塔の前に到着する。
「……何で全員、上を見てるの?」
メイヤが嫌な予感を抱いた、その時。
「メイヤ様!状況報告します!」
「ええ!」
「……塔の上で、手も足も出ません!」
「……は?」
「観光路から……突入を!」
「いえ!違います!」
警備兵が必死に首を振る。
「塔の……外壁の上です!!」
「……げっ!?」
「どうやって登ったのか……不明であります!!」
メイヤは反射的に塔を見上げた。
――いた。
明らかに人が立つ想定ではない、外壁の縁。
そこに、猫族の女性が――
ぶら下がるでもなく、普通に立っていた。
……嘘でしょ?
「……あれじゃ、手出しが出来ないわね」
「は、はい……」
その瞬間。メイヤは両手を口に当て、叫んだ。
「ちょっと!!」
猫族の女性が、きょとんとして下を見た。
「早く!!降りて来なさい!!」
一瞬の沈黙。
そして――
「えー?」
不満そうな声が、上から降ってくる。
「だってさぁ!」
彼女は塔の外壁を尾でぺしぺし叩いた。
「この建物!中空構造!振動吸収!しかも中に何か通ってるだろこれ!!」
「今それどころじゃない!!」
「いや大アリだって!!」
猫族の女性は目を輝かせた。
「なぁ!これ誰が作った!?設計者に会わせろ!!今すぐ!!」
メイヤは頭を抱えた。
……来てくれたのは嬉しい。だが。
想像以上に――危険物件ね、この人!塔の上で、好奇心が暴走している。
そして誰も知らない。
この猫族の女性こそが、この領地の未来を根底から変える存在だという事を――。




