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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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笑ってた資料が笑えなくなる時

「うーん……」


メイヤは椅子に深く座り直し、資料をめくり続けていた。


「確かに……何に使うんだ?ってのが殆どね」


図面、簡単な説明、用途不明。

実験結果だけが淡々と書かれている。


「まあ、だから“不要”判定なんだろうなぁ〜」


そんな軽い感想で、次の頁。


「……ん?」


目が止まる。


「箱型構造……側面にハンドル?」


説明文を読む。


『付属の回転把手を回し、上部に露出した金属線に触れると、微弱な刺激を感じる』


「……」


「ぷっ!」


思わず吹き出した。


「なにそれ」


指で文章をなぞりながら笑う。


「箱に付いてるハンドルを回して、上に出てる鉄線を触るとピリッとする?」


「どんな仕組みよ、これ」


絵を見る。歯車。内部に謎の円盤。巻かれた細い線。


「謎仕組みだね?」


「一体、なんの為よこれ」


そのまま読み進める。


『通称:エレキッテル(仮)』


「……は?」


メイヤの笑いが止まった。


「え?」


もう一度、文字を追う。


「エ……レ……キッテル?」


「……」


「……エレキッテル?」


脳裏に、前世の記憶が一気に浮かぶ。


静電気。摩擦。回転。感電ごっこ。


「……」


メイヤは、ゆっくり資料を机に置いた。


「これ……」


声が、少し低くなる。


「まさか……」


指で、図面の構造を辿る。


「エレキテル……じゃない?」


笑いは、もう無かった。


「……だから“不要”?」


「だから“使われなかった”?」


メイヤは息を吸い、吐く。


「……冗談じゃないわよ」


雪の降る音が、妙に大きく聞こえた。

不要指定。未使用。忘れられた箱。

――だがそれは、本当に「不要」だったのか。


メイヤの目が、静かに細められた。


「ちょ、ちょっと待ってよ……!」


メイヤは資料をばさっと戻し、別の束を引き寄せた。


「さっき……確か……」


頁を繰る指が止まる。


『ガラス瓶内部の空気を排出し、内部を空に近い状態にする実験』


「……あった」


さらに読み進める。


『封止後、蓋を外すと“ポン”という音を立てて破損する例あり』


「……」


メイヤの背筋に、ぞわりと寒気が走った。


「真空……」


「ガラス瓶……」


「ポン、って……」


頭の中で、別の映像が重なる。


「……裸電球」


ぽつりと呟く。


「確か……中、真空じゃなかった?」


机に肘をつき、記憶を掘り起こす。


「中の空気を抜かないと、熱でフィラメントが燃えちゃうから……」


「だから真空、もしくは不活性ガス……」


資料を睨みつける。


「しかも……光る部分」


別の記憶が浮かぶ。


「最初期は……日本の竹を炭化させたフィラメント……」


「エジソンが使った……」


喉が、ひくりと鳴る。


「……ねえ」


誰もいない部屋で、思わず声に出す。


「これ……偶然?」


机の上には、

・回転で“ピリッ”とする箱

・真空ガラス瓶の実験

・用途不明で放置された資料


「いや……」


メイヤは、ゆっくり首を振った。


「理屈として……繋がりすぎでしょ」


笑えなくなっていた。


「……この世界」


「“電気”に、もう手をかけてるじゃない」


ページの端を、強く押さえる。


「問題は――」


小さく、息を吸う。


「この理論……合ってるかどうか、よね」

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