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【完結】神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~   作者: 川原 源明
第21章 世界へ

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第409話 移植本番と……

翌日フェアノールとノールに話をしたら、午後にも手術をすることになった。


 朝日が差し込む部屋。窓の外から、鳥のさえずりが聞こえる。


 ミアンと精霊達と一緒に、研究所の一室で準備を進めていた。


「ラミナってすごいよね」


「ん?なにが?」


「私の時もそう思ったけど、心臓を移し替えることが出来るなんてフェアノールさんが言ってたように神様だよね」


 私の事というのは肺の病巣を摘出した件かな。


『せやなぁ』


『誰もがやらなかった領域だからな』


『そうですね、将来神様と呼ばれるようになるのも納得出来ますよね』


『だね~』


 個人的には、今回の血管は太いからやりやすいんだけどなぁ、以前やった脳の細い血管をどうのこうのするよりは圧倒的に簡単な手術だと思っている。


「ん~そうなのかな~?今回は血管も太いしそこまで難しくないよ?」


「いやいや、心臓を移すとか怖くて出来ないよ!?」


 ミアンが目を見開く。


「出来るか出来ないかが分かれば大丈夫じゃ無い?」


「かもしれないけど……、患者さんを死なせるリスクが怖くて私はあまり……」


 たしかにリスクは大きいと思う、術中の不測の事態というのが一番怖いとは思うけど、考えられる不測の事態に対して手を打っていればそこまで恐れることはない気がする。


「そっか……」


 その後は何をしゃべるわけでも無く黙々と準備を進めていった。道具を並べる音だけが、静かに響く。


◇◇◇◇◇


 手術を始める少し前。


 手術を開始する十五分ほど前に手術をする部屋の隅で、心臓を取り出すダミーの準備を進めていく。


「これが、心臓を提供するダミーですか」


「はい」


「なるほど……」


 源に尋ねられた。興味深そうに見つめている。


 何かあるのかな?


 心臓を取り出すダミーの方は正直、短時間で摘出できるしカブリト等も使わなくて良いので、準備するだけでいい。


「こっちの準備はOKです」


「それでは、ノール君を呼んできますね」


「お願いします」


 イリーナが部屋から出て行く。足音が遠ざかる。


 今回もいつものメンバー+源だ。


 しばらくすると、イリーナがノールを連れてきて着替えを促していた。


 後からフェアノールが来た。扉が開く音。


『『『『『ぇ(ぁ)?』』』』』


 入ってきたフェアノールを見ると精霊達が何か驚いているような様子を見せた。


 それと同時に、フェアノールが人差し指を立て口に押し当てていた。静かに、という仕草。


 ん?


「なにどうしたの?」


 小声で尋ねる。


『大丈夫です。おそらく術後に分かると思います』


「ん?」


 フェアノールに何かあるって事だろうか?


 とりあえず、これから始まる移植手術に集中しよう。深く息を吸う。


 ノールの準備が出来、私たちの準備も出来た。


「それじゃあ、ノール君の心臓の移植手術を行います。よろしくお願いします」


『『「「「「よろしくお願いします」」」」』』


 声が揃う。


 私のサポートにミアン、ノールの頭付近で意識と呼吸管理役のウッドゴーレムになっているミント、私が使う道具の準備等をするまん丸、少し離れたところでアクアとイリーナ、源が立っていた。


 イリーナと源がアクアから色々説明していく。


『カブリト吸わせるで』


「うん」


 ミントがガーゼに薬品をしみこませてノールの口元にあてた。


 しばらくすると。


『落ちるで』


 意識がなくなると言うことだろう。


『ええで』


 ミントから合図が出るといよいよ本番だ、練習通りに胸部を開き、胸骨肋骨を取り外しどんどん進めていった。


 集中する。手が、正確に動く。


 何事も無く進み、心臓も移植し骨を戻し切り開いた胸を閉じた。


「大丈夫そう?」


 私の中では問題ないと思うが、念のためにアクアに確認した。


「えぇ、問題ありません」


 アクアが微笑む。


 なら大丈夫かな。ほっとする。


「じゃあ、エセリアお願い」


 エセリアがコクコクと頷き、わずかに輝いた。柔らかな光が、部屋を包む。


 エセリアが浄化を使い、カブリトの成分をノールの体内から抜いた。


「これで終わりかな、おつかれさまでした」


 肩の力が抜ける。


『『「「「「お疲れ様でした」」」」』』


「それでは、私が病室に運びますね」


「お願いします」


 イリーナがノールを抱えようとすると、源が代わりにノールを抱きかかえていた。優しい手つき。


「自分が連れて行こう」


「ありがとうございます」


 イリーナが礼をいうと、源がノールを抱えイリーナと一緒に手術した部屋を出て行った。


「片付けようか」


「うん」


 ミアン達と一緒に道具を片付けていると、フェアノールが入ってきて、私の側まで来た。足音が近づく。


「ちょっと良いかね?」


「はい?」

 

 片付ける手を止めフェアノールの方を見た。


「対価についてなのだが、イリーナさんに聞いたところ、そなたと話してほしいとのことでな」


 ぇ……、対価は私が決めるって事!?


 今までは全部イリーナの方でなんとかしてくれていたのに……。


「はぁ……」


 戸惑う。


「何か変えたい過去とかはあるかい?」


「ぇ?」


 変えたい過去!?


 思いも寄らないことを聞かれて少しびっくりした。心臓が跳ねる。


「ぇ……?」


「わしらに出来ることはそれくらいしかないからね」


 "わしら"複数ってこと?


 ノールも含むと言うことだろうか?


「ぇっと……、過去ってどんなことでも良いんですか?」


「出来る出来ないがあるが、とりあえず変えたいことがあるなら言ってみると良い」


 変えたい過去、ふと頭によぎったのは両親のことだった。


 胸が、痛む。


「亡くなった両親を助けることとか……」


 小さな声で言う。


「だそうだ、どうかな?」


『それくらいなら構わん』


 ぇ?


 驚いて目を見開く。


 フェアノールの方から正体不明の声が聞こえた。


 低く、重い声。


 誰?


 心臓が、早鐘を打つ。


 何かが、始まろうとしている。


 そんな予感がした。


読んでくれてありがとうございます!


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