第408話 心臓移植練習
ミーティング後からミアンと一緒にクゥの所で練習をすることにした。
白い部屋に、台が用意されている。緊張した空気が漂う。
「ねぇ、ラミナどうするか分ってるの?」
「いや、全く」
現時点で心臓を移植する方法なんて、理論上のことしか分らない。
「とりあえず、大静脈、肺静脈、大動脈、肺動脈の血管を一時的にポンプに繋げないとかな~?」
「じゃあ、心臓に繋がるそれぞれの血管にチューブを繋げる作業が必要になるかな?」
「だね~、あとは心臓をどうやって移植するかなんだよね~」
「そうなの?」
「うん、血中に空気が混じっちゃうと血流を妨げちゃうからね、空気が入らないようにしないといけないんだけど、動き続ける心臓をどうやって移植するかなぁって」
「血管に空気が入るとそうなっちゃうんだ」
「うんうん、だから移植する心臓をどうやって移すかなんだよね~」
『血管に入り込んだ空気ならクリーンで対応出来ますよ』
「あっ、そうなんだ」
「ん?」
ミアンが首を傾げる。
「アクアが血管に入り込んだ空気ならクリーンで対応出来るって」
「そうなんだ、それじゃあ空気が異物という扱いになるんだ」
『そうですね』
「だね~、とりあえず、四つの太い血管からポンプに繋がるチューブの用意と、実際に繋げてみる事かな?」
『ポンプの役割なら私とフゥがやりましょうか?』
「フゥも?」
『血中に必要な成分を入れる役目だね!』
フゥが元気よく言う。
『そうです』
「そうなんだ、お願いしていい?」
『えぇ、上下の大静脈と肺動脈、大動脈と肺静脈と繋げてくれれば大丈夫ですよ』
「了解、ポンプ役はアクアとフゥがやってくれるみたいだから、やれるだけやってみようか」
「うんうん」
「じゃあ、準備しよっか」
「了解~」
その後は二人で色々な準備をしていった。道具を並べる。カチャカチャと、音が響く。
一通り準備が終わり、さっそく練習に取りかかった。
いつもの手順を踏みながら進めていく。
今回は心臓周りの作業だ、そうなると、胸骨の半分程を取り外しておいた方が良いので、胸部を開き、胸骨の真ん中を切り、それにつながる肋骨も切り骨を取り外した。パキッと、骨を切る音。
「これ、どの部分にポンプに繋がるチューブを繋げるかなぁ……」
「大動脈も肺動脈も直ぐ分岐しちゃうね、肺静脈も四本あるよねぇ」
これは絶対に時間がかかる大手術になりそうだ……。
「大動脈は付け根近くでかな……、肺静脈は四本それぞれにチューブ繋げようか……」
作業量がとんでもないんだけど……。ため息が漏れる。
「今までと比じゃ無い位作業量多そうだね~」
「だね、ブツブツ言っても仕方ないし……始めようか」
深く息を吸う。集中する。
「うん」
「クゥ~、悪いんだけどー」
ここまで言いかけたところでそれぞれの血管と同等の長さのダミー血管一メートルが現れた。光が集まり、形が作られる。
「ありがとう!」
「直ぐ用意してくれたんだね」
「うん、じゃあ始めよう」
血管に迂回路を繋げるだけの作業ならもっと細い血管で経験済みだから問題なかったが、目の前には心臓周りに太い血管が密集した場所での作業、一つ一つどの血管でどこに繋げるかを間違えないように進めていった。
とりあえず、繋げるべき場所の接続に関しては終わった。
「あとは心臓?」
「うん、クゥーもう一体ダミーだして~」
直ぐ側に、台に乗ったダミーが出現した。
「んじゃ、心臓を取り出そう」
「うん!」
テキパキと、作業をして心臓をいつでも取り外せる状態にした。
今回の練習の本番だ。
「よっし、やろうか」
「うん」
「じゃあ、アクアとフゥ、お願い」
『『はい(!)』』
アクアとフゥが心臓の代わりのポンプを作動し、メインダミーの心臓がいつでも取り出せるような状態になった。
まずはメインのダミーから心臓を切り離し、次にサブのダミーから心臓を取り出し、急ぎメインにつないでいった。
繋いでいる途中で心臓が動き出した。規則的な拍動。
「上手くいきそうだね」
「うん、このまま全部繋げよう」
全ての血管を縫合してその後ポーションを使いつなげて行った。全ての血管を心臓に繋げおわった後、止めていた血流を戻しつつ可能な限り空気を抜いた。余計な出血をしないようにポンプ役をしていたチューブを取り外した。
「アクア、この時点でクリーンはダメだよね?」
『そうですね』
『じゃあ、ボクに任せてよ!』
「ぇ?」
こういう場面ではあまり任せたくないフゥが言い出した。不安が過る。
「フゥ何やるか分ってるよね?」
私は心配だったので確認した。
『もちろん!血液中に残ってる空気を取り除けば良いんでしょ!』
ちゃんとやるべき事を分っているようだ。
「そうなんだけど……、血管に穴開けた方が良い?」
『ん~ん、大丈夫!』
「んじゃ、お願い」
『はい!』
フゥは返事をすると、ダミーの開いている胸を撫でた。緑の光が、優しく広がる。
『これで大丈夫だよ!』
私はアクアの方に視線を移した。
『フゥの言うとおり問題ないですよ』
アクアがOKを出してくれるなら大丈夫なのだろう。ほっとする。
「了解、そしたら戻していこうか」
ボーンヒール軟膏を使い切り離した胸骨と肋骨を戻し、開胸した胸を戻していく、そして最後に、クリーンを使ってカブリト毒を抜いた。
「終わった……」
肩の力が抜ける。
「おつかれさま~、ラミナすごいね、初めてなのに完璧じゃん!」
ミアンが笑顔で言う。
「理屈上は分ってたからね、心臓を切り離して戻しても動くかどうか心配だったけども……」
『問題なく心臓が動いていますね』
「これで本番もできるね!」
「だね、いつもみたいに練習を繰り返そうか」
「うん」
その後は、いつものように何度も何度も繰り返し練習をした。肺静脈四本をやるのではなく、左心房から切り離しにしてみたがこれも上手くいった。本番は手間を減らすために左心房から切り離す方向に決めた。
「本番のダミーの心臓は、弱ったりすることの無い丈夫なものを用意しないとだね」
『そうですね、フェアノールが何年生きるのか分りませんが、確実に七百五十年は生きますからね』
「エルフって心臓の作りが違うの?」
『ちがわんやろ』
『だな、成長速度がとんでもなく遅いと思えば良い』
「そうなんだ……」
とんでもないというレベルなのかな?
人種とエルフ種の差を考えれば十倍位だろうか?
「そっか……」
とりあえず不安要素は大分減った。
近日中に移植本番に取りかかろう。
決意を新たにする。
必ず成功させる。
ノーア君を、救うために。
そう心に誓った。
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