第406話 人工心臓
翌日
フェアノールを交えた治療ミーティングをする前に、源、ライラ、イリーナ、ミアンと私、五人でミーティングをすることにした。
朝の光が差し込む会議室。緊張した空気が漂う。
正直、昨夜アクアから聞いた内容だと、男の子の心臓はいつ機能停止してもおかしくない状況で、どのような対応が現実的なのかが分らなかった。
「……と言うわけです」
アクアが昨夜と同じ説明を皆の前でしてくれた。
「ふむ、心臓そのものの機能ですか……」
源が腕を組む。
「そうですね、完全に治すとなると、心臓そのものを持ってこないとダメですが……心臓を入れ替えるとなると……ですね……」
イリーナと源が話していた。深刻な表情。
ふと思う、心臓の代わりになる物とか作れないのだろうか?
もし出来れば、ダミーの身体から心臓を持ってくるのに役に立つきがする。
「ライラさん、心臓って作れないですよね……?」
私がライラに尋ねると、皆の視線がライラに集まる。
「いやいや無理だろ、一応この前の話から、心臓を再現しようとしているけど、上手くいかないんだよ」
既に挑戦していたんだ。驚く。
「具体的にどのような事で上手くいってないんですか?」
ミアンがライラに尋ねた。
「素材と魔法陣だね、素材に関してはゴム見たいな柔らかい物を考えているんだけど、見た目的に心臓のような形にするまでは出来るんだが、中の空間や逆流を防ぐ為の弁とかがな……」
「というと?」
「心臓を半分にした型をした物にゴムを流し込んで、もう半分も同様にして、固まったらくっつけるんだが、魔法陣が悪いのか、素材が悪いのか旨く流れないんだよ」
心臓は全体が動いて血液が流れるから、魔法陣じゃ一部しか動かなくてって事だろうか?
「ライラ、物はありますか?」
「あぁ、いつか精霊達に見て貰おうと思ってたからね」
ライラがカバンから作った物を出した。茶色いゴム製の心臓が現れる。
「これだよ」
『形に関しては完璧ですね』
『せやな、けどその素材やったらうまくいかんやろな……』
『だな、魔法陣も修正する必要があるだろ』
『心臓の収縮が上手くいかないんだね~』
『仮に上手く流れても、何れ使えなくなっちゃうんじゃない!?』
『そうですね、この素材だと何れ伸びきっちゃいますね』
『せやなぁ、それを言うたら、ええ素材なんてないんちゃうか?』
精霊達からはダメだしされている……。
『ミント、エイシェントパインの樹液は使えないのか?』
『あんなん、リルーシア大陸の原生林にしかないんやで』
『時間かかっちゃう!』
『ですがそれでしたら、素材は大丈夫そうですよね』
『だね~、後は魔法陣かな~』
『だな』
『ラミナ、紙を用意してください』
これは、魔法陣を教えるって事だろうか?
カバンからメモ帳を取り出し撫でると、四つの魔法陣が現れた。複雑な紋様が、紙に浮かび上がる。
それぞれの魔法陣の上に、右心房、右心室、左心房、左心室と書かれ、よく見ると魔法陣の文字に微妙に違いがあった。
「ライラさん、これを」
「あぁ、なるほど……、一つ前の動きを少しずらした動きをするのか」
ライラが目を輝かせる。
『そうです。その魔法陣使えばスムーズに動く様になりますよ』
「みたいです。それから、素材はエイシェントパインの樹液を使った方が良いみたいです」
「エイシェントパインってどこにあるんだ……?」
「リルーシア大陸の原生林って言ってました」
「遠いな……」
ライラがため息をつく。
「そうですね、倭国から南下して一ヶ月位ですかね?」
『それ位でしょうね』
そうなると、往復で二ヶ月……。時間がかかりすぎる気がする。
「今回の治療に間に合うか知らないが、調達はしておくべき何だろうな……」
「そうですね、同じような病気を持つ人が現れるか分りませんからね」
「はぁ~、実習同行がおわったらリルーシア大陸に行くかな……」
「とりあえず、今は別の方法を考えないとですね」
って違う!
私は、移植するために、手術中に心臓の代わりとなる物を作れないか聞いたのに人工心臓の話になるとは思ってなかった。
「あの、私が聞きたかった心臓の事なんですが、外付けでいいので出来たりしませんか?」
「外付け?」
源が首を傾げる。
「はい、例えば大静脈から肺に流れるポンプと、肺から帰ってきた血液を大動脈に流すポンプの二つを用意してもらえればもしかしたらなんとかなるかもしれません」
「ラミナさん、それって……」
イリーナが驚いた顔をする。
「はい、もしかしたら今までみたいに心臓そのものを他から持ってくる事が出来るかもしれません」
「「ぇ」」
二人の声が揃う。
私としては、ライラの人工心臓話になったことが"ぇ?"って思うべきだと思うんだけど……。
「私としては人工心臓の話になると思ってなかったのですが、仮に術中の血液運搬がなんとかなれば、出来た人工心臓もつけれるようになりますよね」
「そうですが、心臓を取り外して人って生きられるんですかね……?」
「心臓の役割がポンプだけなら、そこをなんとか出来れば出来るんじゃないですかね?」
「確かにそうですが……、出来るんですか?」
「さぁ?」
言っておいてなんだが、今までやったことも実験したこともない事だから出来るとは言えなかった。不安が過る。
『ん~、なんやろ……、なんか忘れてる気がする』
『どうしたんですか?』
ミントは何か気になる事があるのだろうか?
「とりあえず色々試して見るしかないかなと」
「そうですね、ライラ、ポンプの方お願いしても良いですか?」
「あぁ、大きさ問わないなら簡単さ」
まぁ、今の素材で魔法陣を修正すればそれだけでも出来るだろうし、簡単なのだろうが、問題は私の方か、目一杯練習しないと……。今までの手術と段違いの難易度だ。
深く息を吸う。集中しなければ。
そんな話し合いをしていると、フェアノールが来る時間になっていた。
ノックの音が、扉を叩く。
運命の時が、近づいている。
緊張が、高まる。
でも、やるしかない。
この子を救うために。
そう心に誓った。
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