第400話 薩摩薬理学研究所(心筋梗塞)
敷地内に入ると、帝都の研究所と同じような建物が現れた。
白い壁、大きな窓。清潔な印象。
「こちらが、薩摩薬理学研究所になります。」
建物の周りは薬草園なのだろうか?
農園のような一角があった。緑の葉、色とりどりの花。薬草の香りが漂う。
イリーナに続いて研究所の中に入った。
イリーナは、入って直ぐの所にある部屋の扉をノックしていた。コンコンと、音が響く。
中から声が聞こえると、入室した。部屋の中には黒髪の眼鏡をかけた男性がいた。その男性にも、水の子が居ると言うことは、錬金科の卒業生……。
「お久しぶりです。源先生」
イリーナが頭を下げる。
「ちわ~っす」
ライラが手を振る。
「おぉ、イリーナ君、ライラ君久しぶりだね」
男性は、目を細めて二人との再会を嬉しそうにしていた。優しい笑顔。
やっぱり知り合いだったんだ。
「卒業以来ですからね」
「そうですね、そちらが……」
「はい、ラミナさん、ミアンさん、ご紹介しますね、こちらは研究所の所長をしている源先生です。私とライラの恩師でもあるんです」
「源と言います。よろしくお願いしますよ」
穏やかな声。
「「よろしくお願いします」」
二人で頭を下げる。
「源先生、右がラミナさんで、左がミアンさんです。ラミナさんのほうはレポートでもお知らせしたとおりですが、ミアンさんも正確な診断が出来る腕前の持ち主なんですよ」
「ほぉ、それは頼もしい。それでは早速、件の患者の元に案内しよう」
「お願いします」
いったん所長室を出ると、外に出ること無く、研究所の奥に進んでいった。足音が、廊下に響く。
ん?
「あれ?治癒院に行かないんですか?」
首を傾げる。
「治癒院は町中にあるのですが、こちらは二十四時間体制で見守る必要がある人達が入院しているんです」
「へぇ~、治癒院を兼ねてる感じなんですね」
「えぇ、その通りです。ちなみにセンターリタにある研究所も同様に、治癒院と研究所が別れていますが、重度ないしは急変する可能性のある方々が研究所の方に入院されているんです」
「あっ、そうなんだ」
軽度と重度を分けている方が対応がしやすいのかな?納得する。
研究所の二階に上がると、治癒院と同じような病室がずらりと並んでいた。白い扉が、規則正しく続く。
源が一つの病室に入ると、そこは個室のようで一人の高齢女性がいた。白髪、穏やかな顔。
「南さん体調はどうですか?」
『心臓ですか……』
源が患者とおぼしき女性に声を掛けると同時にアクアが言った。
「ぇ?」
驚いて目を見開く。
『彼女は心臓に異常をきたしているのです』
『せやなぁ、心臓がうまく動いてへんねん』
「今日は少し胸が痛いだけですよ」
女性が小さく笑う。
「それって大丈夫なの!?」
患者女性の回答に合わせるように声が出てしまった。
皆が私の方に視線を向けた。
「ラミナさん?」
イリーナが心配そうに見る。
「あっ、すいません、大丈夫です……」
思わずミントの回答に返してしまったが、大丈夫じゃ無いからここに居るわけで……。
『大丈夫じゃ無いですね、胸痛や呼吸困難がみられるはずですよ、それにこのままですと死を迎えることになりますね』
アクアの声が、重い。
「原因は?」
源と患者の女性と会話をしているのを遮らないように小声で尋ねた。
『心臓を動かす筋肉が壊死しているんです』
「それってさ、今までみたいに切ってどうするとかって問題じゃ無いよね」
『そうですね』
心臓だからどうすると言うわけにはいかないし、私に出来る事は何だろう?
心臓を正常に動かせるようになるには、どうするのが一番良いんだろうか?
心臓を動かす筋肉を復活させるのが一番なんだろうけども……。
源と患者のやりとりは耳に入らず、ずっと考えていた。頭の中で、可能性を探る。
なんとなくだけど、普通に動ける様になる手立てはあるはずだ。
心臓が正常に動かないなら、正常に動く様に外部からサポートすれば良いとは思うけど、魔道具とかで出来ないのかな?
魔道具となればライラの出番だけども。
色々と考えていたら、所長室に戻ってきていた。
扉が閉まる音で、我に返る。
深く息を吸う。
どうすれば、この人を救えるんだろう。
考えが、巡る。
答えは、きっとある。
そう信じて、私は考え続けた。
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