表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~   作者: 川原 源明
第21章 世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

396/411

第396話 応援要請

ロストン実習が終わり、ポートリタに無事に戻って来た。


 懐かしい港、潮風、鴎の鳴き声。ただいま、という気持ちになる。


 ロストンに向かう前と変わらず、診断と治療、休みはミアンとファラと三人で、リアナの町に行ったり、魔大陸探索をして過ごしていたが、欠損治療の診療報酬等が明確に決まり、治療許可が下りると、エクスヒールポーション作りと治療でかなり忙しい日々を送っていた。


 ポートリタに来てから十ヶ月ほど経った日、スタッフルームにイリーナ、ライラ、ミアン、私と揃っていた。


「欠損患者の治療も落ち着いてきましたね」


 イリーナが言った。


「そうですね、やっと落ち着いた日々が帰ってきそう~」


 実際に朝から晩までずっと仕事をしていた気分だった。ため息が漏れる。


「だね~、毎日忙しかったもんね」


 ミアンが頷く。


「そうですね、もうじき年度替わりと言うこともあるので、そろそろ次の場所に行こうと思います」


「次の場所?」


 顔を上げる。


「えぇ、倭国です」


「分りました」

 

 "またファラとお別れか~"とちょっと残念な気持ちになっていた。胸が少し重い。


「いつ出発するんですか?」


 ミアンがイリーナに尋ねた。


「そうですね、準備ができ次第、今週末にでもと思っていますね」


「ずいぶん急ですね」


 ここに来るときも急だったが、去るときも急だった。


「えぇ、実は薩摩薬理学研究所から応援要請が来ているんですよ」


「ぇ?何かあったんですか?」


「彼らが、ラミナさんの技術を元に色々やっているようなのですが、なかなか上手くいかないようで助けて欲しいとの事です」


「私の技術って、精霊達がいるから出来ていることも多いのですが……」


 一年前に比べると、ライラが色々な物を作ってイリーナやミアンも同等の事が出来るようになっては来ているが、実際に手術中の視覚部分に関しては、基本グレンの目を頼っているし、明るさに関してはエセリアに頼るし、道具や薬品に関してはまん丸とミント、状況確認はアクアに頼る等、基本的に精霊達がいて、私の器用さが合わさって成り立っている手術がとても多い。


「そうですね、それらを踏まえて彼らに技術指導をしに行く感じですね」


「はぁ、分りました。準備しておきます」


「えぇ、お願いします」


 仕事後、治癒院を出ると、ファラが待っていた。夕日を浴びて、壁に寄りかかっている。


「あ、先輩」


「よぉ、ご飯行こうぜ」


 手を振る。


 ちょうど良かった。私も倭国に行く話をしたかった。


「良いですよ、どこ行きます?」


「まん丸のおすすめにしようか」


「だってまん丸」


『ん~、ドラゴンステーキ!ミディアムで!』


 いや、焼き加減じゃなくて場所なんだけれど……、まぁドラゴンステーキでまん丸おすすめのお店なら既に知っている。


「ドラゴンステーキだそうです」


「それじゃ、アークキラーか」


「ですね」


 ファラと雑談をしながら、アークキラーの店に向かった。石畳の道を歩く。足音が響く。


 お店に着くと、直ぐに席に通してもらい、注文をした。木のテーブル、暖かな照明。


「そういや、薩摩に行くんだってな」


 ファラが言う。


「あれ?早くないです?」


 私が、イリーナから聞いたのはつい先ほどなのに。首を傾げる。


「大分前からイリーナに言われていたからな」


「あっ、そうなんですか?」


「あぁ、まぁお前とは休みの度につるんでいるからな」


「確かにそうですね」


 頷く。


 休日=ファラと行動といっても間違いないレベルだった。


「それで、倭国に行くタイミングなんかを相談受けていたって訳だ」


「はぁ……、そうだったんですね」


 ファラが知っているとなると、それしか無いよね……。

 

「あぁ、リアナの町も一段落したし、こっちはいつでも良かったんだがな」


「あぁ、じゃあ治癒院での業務が片付くの待ちだったんだ」


「そういう事だ、薩摩に行ったら倭国のアカデミーに顔を出してやれ」


「ぇ?」


 驚いて顔を上げる。


「ミラがいるからな、あいつもお前に会いたがっているんだよ」


「ぇ?ミラ先輩は倭国にいるんですか?」


「なんだ知らなかったのか?ハンゾーと結婚しているんだぞ」


 結婚に関しては大して驚かなかった。会った頃から良く一緒に行動しているのを見ていたし、ただ倭国にあるアカデミー居るとは思っていなかった。


「そうなんだ……」


「あぁ、元気な姿を見せてやれよ」


「はい!」


 力強く頷く。


「それから、卒業したらここに来いよ、大陸制覇するぞ」


「約束ですもんね」


 何度目か探索に出た時の夜に交わした約束だった。焚き火の光、星空、あの夜の会話。


「あぁ」


「分りました。卒業後のこととか考えてないけど……」


「四月から五年だろ?あと二年じゃねぇか」


「だけど、決めてないですよほんと」


 実際に何をやりたいかに関しては昔から決まっている。


 知識や技術不足で助けられない命がないようにすること、これが私の行動の元となっている部分だ。精霊達が居れば、どこででも出来るし、わざわざ治癒院に所属する必要が無い、むしろ所属すると組織のしがらみがあって動きにくさを感じる。


 そうなると、"就職より冒険者兼流れの医者がいいのかな?"というのが、この実習が始まってからずっと思っていることだ。


「そうか、私が五年になる頃には決めていたけどな」


「人それぞれって事ですよ」


「そうだな」


 ファラが笑う。


「お待たせしました~、ドラゴンステーキセットです~」


 雑談が一区切りするのを見計らっていたかのように、ステーキが運ばれてきた。ジュウジュウと、肉が音を立てる。香ばしい匂いが広がる。


 その後も雑談をしながら夜遅くまで過ごした。


 笑い声、温かな時間。


 ファラとの、大切な夜だった。


 また会えるかな。


 そう思いながら、私はグラスを傾けた。


 別れが、近づいている。


 でも、また会える。


 そう信じて。


読んでくれてありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」「応援したい!」と思っていただけたら、

作品ページ上部の【☆評価】【ブックマーク】、そして【リアクション】ボタンをポチッと押していただけるととても励みになります!


みなさんの応援が、次回更新の原動力になります。

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ