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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
私設鉄道の勃興

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荒川水運

明和7年1月25日 江戸 新橋 有坂民部邸


 この時代に飛ばされて2年半。思えば遠くに来たもんだ。この2年半、特に去年は時代の急激な加速に頭を抱える一年だった気がする。


 そう言えば、去年の今頃も同じこと言っていた気がしないでもない。我ながら進歩がないな。


「総さん、いるかい?」


 川越藩に出張っているはずの源ちゃんが自室へ入ってきた。


「えらく突然帰ってきたね。どうした?」


 連絡便で毎日やりとりしているから大抵の用事は書類で済ませているが、何か特別な用事でもあったのだろうか?


「荒川鉄橋の工事で荒川の水運に障害が出て水運業者から苦情が来ているんだよ。橋脚工事のせいで通行可能な川幅が狭くなっていて不都合だってさ。完成間近だからもう暫く我慢してくれと説得しているんだが……。」


 確かに橋脚が流されないように基礎工事をやったせいで川幅が狭くなっていることで通行障害になっているのは把握していたが……。


「わかった。明日にでも出向いて補償交渉をするよ。」


「そうしてくれると助かる。なにせ、連中も鉄道が開通すると物流革命で職を失うとこっちの話をまともに聞いてくれねぇんだ。総さんが出張ってくれたら、ちったぁマシな話し合いになるだろうからさ。」


 鉄道が開通しても当面は輸送力の不足が目に見えているから水運は重要なままだ。だが、江戸の鉄道整備が想像以上に衝撃を与えていた事実に気付かされた。なかなか思い通りにはいかないものだ。


 ふと窓の外を見ると雪がまたちらついている。寒いはずだ……ん?待てよ……。ひょっとしたら……。


「源ちゃん、荒川の水運って高瀬舟とかそういうアレだよね?」


「……ん?あぁ、そうだ。それがどうしたんでぇい?」


 ふむ。アレを投入する良い機会だな。


「源ちゃん、蒸気曳船を導入する良い機会だ。川幅が狭くても曳船に艀つなげてを曳行させれば今まで以上の輸送力になるじゃん。」


「そうは言うが、アレは相良から回航するには難しいぜ?外海を航海させる船じゃない。」


「それなら問題ないよ。相良から蒸気機関だけ江戸まで輸送させて、江戸近辺の造船所に船体を造らせればいい。あとは運んできた蒸気機関と船体を組み立てれば態々相良で建造する必要はないよ。」


 ブロック工法ってやつだ。まさか、こういう形でブロック工法使うとか思いつかなかったが、まぁ、いいか。


「なるほど、それはいい。」


「早速、相良に連絡を入れて小型船舶用蒸気機関の増産を指示しよう。あとは、材木問屋への発注だな。10日後に品川湊で水運関係者の会合をするから、川越への帰り道に彼らに伝えて欲しい。」


「任せてくれ。」


 この際ついでだから水運関係者も統制して航路管理をさせるべきだろうから組合でもでっち上げるか。さぁ、また一つ忙しくなるぞ。

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