金を失う道
明和6年6月10日 武蔵上野 上野駅
この時代、上野は江戸であって江戸ではない微妙な位置にある。であるが、ここも都心と言える場所である。
新橋から日本橋、万世橋を経て上野へやっと線路が繋がった。ここからがスタートである。今までは市街地のために工事が兎に角手間取ったが、これからは人口密集地ではない農村地帯だ。工事のスピードが上がることだろう。
さて、そこで問題が発生したわけだ。そう、事実上の資金のショートである。赤字とか倒産とかそういうわけじゃない。単純に建設費用の捻出に問題があるだけだ。元々、それほど余裕がないのに無理に路線延伸を進めた結果、内部留保が底をつきそうになっているだけだ。
数ヶ月建設を休止すればまた建設を再開できるわけだが、どうにかなるわけでもない。これなら、江戸市内線を優先して集金力を高めるべきだったかもしれないが、鉄資源の確保は重要である。コレがなければ鉄道も蒸気船も大砲も作れない。
困ったものだ。
「源ちゃん、やっとここまで来たのに、カネがない。だからこの先、路線を伸ばせない・・・。」
「結構無理して上野延伸を優先したからね。本当は浅草と日本橋をつなげたほうが良かったんじゃないかな?」
「あぁ、そう思うよ。」
JR線を基準に路線計画を設定したのが失敗だったかなぁ・・・。
「川越の鉄はどうしても手に入れたいけど、水運でしか手に入らないしなぁ・・・。」
「そう言えば、津山に行く途中で鉄鉱石を見つけたよ?」
「どこ?」
「柵原って言ったっけ?吉井川遡って行ったところなんだけどね。」
・・・、柵原鉱山を見つけたのかよ。この時代見向きもされていないアレを・・・。
「どうしたんでぃ?」
「いや、柵原鉱山って教えてたっけ?」
「いや、聞いてないねぇ。やっぱ、あそこにあるんだ。」
引き寄せられるように発見するとか何この人・・・。でも、結局あそこも水運だよなぁ。
「津山藩を説得すれば手に入るんじゃねぇかな?」
「手に入っても、すぐには活かせないよね。津山藩と岡山藩を抱き込まないと実現できない・・・。それにあそこは硫黄分が多いから面倒だしなぁ。でも、あの山まるごと鉄の塊だしなぁ・・・。」
「総さん、オレっちが今度調査に行ってこようか?」
うーん、行ってきて欲しいけれど、でも、こっちでも砂糖の栽培とか色々とやって欲しいことが・・・。あーもーどうしよう!
「あー、また頭抱えてる。大丈夫だって、ほら、幸太郎だっけ?あいつが居るじゃねぇか。こっちのことはあいつに任されば良いさ。」
「だけどなぁ・・・。」
「抱え過ぎだぜ?」
まぁ、そうなんだよな。だから、こそ副官を望んでいたわけだし・・・。
「わかった。源ちゃんに任せるよ。最悪、岡山藩に製鉄所建設することも有りで。」
「そうならんように上手くまとめてくるさ。おう、幸太郎、後は頼むぜ!」
「義兄上、源内殿の申されるように、もう少し頼ってくだされ。」
「あぁ、わかった。そのために連れてきたんだもんな。頼らせてもらうさ。」
と言っても、カネがないんじゃ何も出来ないんだけどね・・・。




