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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
全ては鉄がなければどうにもならない

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世界のルール

明和6年6月15日 江戸 新橋 有坂民部邸


カネがない。資材はあってもカネがない。幕閣の無茶振りで内部留保を使い果たしてしまった。それは前に愚痴った。うん、でも愚痴らずにいられない。


「結奈、ちょっといいかな?」


「何かしら?」


「うん、うちの金庫からいくらか持ち出したいのだけど・・・。」


鬼の形相でガン飛ばされた・・・。怖いよ。


「結論から言うけど駄目よ。理由は聞いてあげるけれど。」


わかっていた。そう言われると・・・。


「鉄道事業を継続する上で資金がショートした。もうムリポ。」


「自業自得ね。持ち出しとか駄目だからね。自重して資金を貯めなさい。例の鉄道経営ゲームもそうだったでしょ?」


「じゃあ、カネが掛からない方法で資金繰りする案はない?」


「・・・旦那様、貴方、乗り鉄してあちこちで食べ歩きとかしていたのに思いつかないなんて呆れるわ。」


「???」


「駅そばとか駅弁とかあるじゃない?それをやればいいじゃない。いくらでも屋台の蕎麦屋なんてあるのだから営業権を与えて利益を上納させればいいじゃない?乗客という固定客を得られるのだから三方両得よ?」


「でも、営業距離短いよ?それで食べる人って居るかな?」


「だから、軽く食べれるものを中心にするのよ。」


「わかった。ローコスト・ローリターンだけど現代でも通用しているし、早速手配する。」


「あと、人力車でも作ればいいんじゃない?」


「籠引きとガチ戦争やれと?」


「効率化よ?籠は二人だけど、人力車は一人で済むのよ?なら、単純に2倍の輸送力になるわけだから、駅に集中的に配備して現代のタクシーみたいにすればいいわ。」


「試作をさせてみるよ。当面の営業利益でなんとか工面できそうだし。」


「手持ちの資金で出来ることってこれくらいじゃない?」


「うーん、もっとこう一気に稼ぐ方法はないもんかね?」


「ないわね。そもそも、便利になったと言っても、世の中はまだ私達についてきていないわ。だから、仮にあっても効果的じゃないと思うわ。」


なかなか思うようにはいかないものだ・・・。


そもそもの原因はわかってる。幕府のお偉方に振り回されたり、長州が要らん真似するから行動の一貫性が損なわれてしまっていることだ。そして、実質ワンマン体制だからトップ不在になると事業が停滞するという問題・・・。


はぁ、本当だったら今頃相良で蒸気機関車とか蒸気船とかそんなんで遊んでたり、田沼公を補佐して田沼時代を守ろうと思っていたのに・・・そう、脇役のつもりだったのに、なんかよくわからんうちに主役になってしまっているからだ。


脇役だから腹心の部下とか必要なかったのに、主役にジョブチェンジした結果、必要なかったものを必要としているわけで、そんなもんが2年で手に入るわけがなく・・・。


あーもー。


「・・・何しているの?旦那様?」


「我が身の不幸を嘆いているんだよ。なんで脇役が主役になってしまったんだろう・・・。」


「自分の心に手を当ててよく考えなさい。それでわからないなら・・・わからないボンクラだったわね・・・ごめんなさい。」


「酷くないか?」


「全部、貴方が好き勝手した結果じゃない。その結果、第一次長州征伐まで起きてしまったのだから少しは反省なさいませ。無駄でしょうけど・・・。」


「そうだね、もうここまで歴史が狂ってるんだから反省しても無意味かもしれないね。」


「それで、貴方はこの世界が楽しいの?面白いの?」


「まぁ、楽しいね。面白いね。充実しているよ。」


「じゃあ、それでいいじゃない?この世界で骨を埋めるんでしょ?なら、もう無理に世界を歴史を引き止める必要はないと思うわ。もっとも、もう止められないと思うけれど。」


「そもそも、この世界って歴史修正力機能してんの?」


「人の生死はある程度拘束されているっぽいわね。」


「じゃあ、次はやっぱり阿部伊予殿にお迎えがくるのか・・・。」


「この世界のメインキャラに適用されているかはわからないけれどね。」


その日、私と結奈はこの世界のルールについて考察する会話を延々と続けたが、結局は歴史修正力がほとんど機能していないという結論しか出せなかった・・・。つまり、自分の行動がそのまま歴史の方向性を決めるということだ・・・。


とんでもないところに来てしまったと思うが後の祭りである・・・。

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