鉄道前線北へ!
明和6年2月11日 江戸 新橋 有坂民部邸
老中のお陰で自腹切って鉄道建設をさせられ、しかも、私企業ではなく、公企業として運営、利益は幕府へ上納しろという無茶苦茶な要求を受けて1ヶ月・・・。
大江戸鉄道の延伸という形で新橋~日本橋を3日に開業させ、今は日本橋から北上し万世橋経由で上野への工事を始めているところだ。
先日の献金騒ぎの時に身銭を切って材木を物納してきた材木問屋が何件かあるが、彼らは三井に同調して鉄道建設への資金協力拒んだ大店と違い、鉄道建設で大量に必要となる枕木の需要を見込んで協力を申し出てきた。正直、有り難い話だった。彼らの協力で当面必要な材木が確保でき、相良を経由して運ぶ必要がなくなった。
まぁ、ぶっちゃけた話、コンクリートを作れば材木は必要ない。でも、コンクリートで枕木を作ると物凄く時間がかかる。もっとも、材木であっても乾燥させて亀裂が入ったりしないようにする必要はあるけれど、その辺は材木問屋が適当なものを用意してくれるからその手間がかからない。
秩父と青梅で石灰石が採れるから、そこでコンクリート枕木を量産すれば構わんだろう。鉄筋の代わりに竹で代用できるし今の時点で貴重な鉄を無駄に使う必要はない。
待てよ?
鉄道連隊みたいなのをこの際創ってしまえば良いんじゃないんだろうか?帝国時代の鉄道省を基本として、そこに鉄道連隊を組み込んでしまえば良い。それが効率的だ。うん、そうしよう。
取り敢えずは、鉄道連隊を5つ創設して、内1つを教導鉄道連隊としよう。それだけあれば、上野、大宮、川越から挟み撃ちで作業ができる。ナイスだ、ナイス!
あぁ、そうだ、老中の松平周防様は岡崎藩主。耐火レンガ作るついでに建材用レンガの量産を依頼しよう。ちょっとしたことだが、藩財政の一助になろう。
「お奉行、お奉行、川越藩主松平大和守様がお越しでございます。」
「客間にお通しせよ。すぐに参る。」
藩主自ら出向くとか思ってもみなかったが、先日の老中の仲介のお陰だな、などと考えながら客間へ向かった。
「大和守様、態々のお越し、かたじけなく存じます。有坂民部にございます。」
「うむ。家老を通しての話では埒が明かぬし、わからぬ故、余直々に参った次第である。」
「まずは、何からお話いたしましょうか。」
「鉄道なるものは、ここ新橋を中心に伸びておるのは知っておる。乗ったことは未だ無いが、飛脚よりも速いそうじゃの?そして大八車よりも多く運べると聞く。」
「左様でございます。いずれ、馬車鉄道ではなく、蒸気鉄道へ移行いたしますが、馬車鉄道でも今よりも格段に便利になりまする。江戸は広い故、市中交通でありますが、いずれ、街道に代わる都市間交通となりましょう。」
「左様か、我が川越藩は川越、前橋に分かれておる。前橋には陣屋を置いて統治しておるが、鉄道があれば川越からの統治に一元化できるのぅ。」
「両拠点間がつながれば産業の活性化が期待できまする。また、川越領の秩父には鉄と石灰石が有りますれば、これを用いることで鉱工業の発展が望めまする。」
「先日、平賀が来て左様なことを申しておったのう。それら資源を活用するには鉄道は大事ということか。」
「左様でございます。荒川の水運も大いに経済に寄与いたしますが、天候に影響されやすく不安定。また、川船では鉄道よりも輸送量は少ないため、今後は非効率と言えましょう。」
「左様か。相分かった。今後、家中の者を遣わす故、余に教授したことをその者らにも教授し、手足とするが良い。我が藩は転封続き故、財政が苦しい。是が非でもそちらの言うところの殖産興業をなさねばならぬ。事がなったならば、そちが苦労しておった我が越前家の本家筋である津山藩の説得に協力してやろうぞ。」
「格別の取り計らい、有り難き幸せ。」
「うむ。ではの。」
これで関東の主要な藩をすべて味方に引き入れた。重要資源の確保も出来た。三井がどう動こうと地盤が固まった現状ならば、安心して事をすすめることが出来る。幕府内の不穏分子にだけ目を向けておけば良いだろう。
「旦那様、今度は付け届けが届いてるけれど?」
どこの誰だよ、次から次へと賄賂送るやつは。




