ファーガソン・ライフル
明和8年7月10日 江戸城 吹上馬場
第一回密貿易で渡りを付けたイギリス人将校ファーガソンが第二回密貿易船団にて来訪した。2万両もの大金で一本釣りした結果、彼はすこぶるやる気に満ちていて開発書類などをまるごと持ってきてくれたようだ。
彼の持ってきた書類を和訳すると同時に、彼にも日本語を覚えてもらうなどして来訪から2ヶ月が過ぎ、その間に試製ファーガソン・ライフルを10丁製造してもらった。
彼の開発した後装式銃はやはり構造的欠陥があり、尾栓などに不具合が発生することが判明した。これらの問題を解決すると同時にマガジン装弾と雷管の開発を命じてみた。
「画期的デース!」
「やってくれるか?」
「ワタシに任せるネー!」
と、似非外国人っぽい軽い会話の末、彼は工房に閉じこもった。
装弾用マガジンの開発は3日で終了したらしく、彼は踊りながら持ってきた。元々、マガジンの機構を簡単に説明していたから、専門家の彼にはあっという間に形にすることが出来たようだ。
だが、やはり問題は後装式特有の強度であり、マガジン装弾による密閉性が難しいらしい。雷管は製造そのものは難しいけれど構造を理解した彼にとっては時間の問題だそうだ。結局、強度問題の解決さえ出来れば万事オッケーらしい。
こんな簡単に100年くらい技術革新出来るとかこの世界どうなってんだろうか……。
製造技術は兎も角、理屈の上では既に実用化の目処が立ってしまったことに軽く目眩がしたが、最早後戻り出来ないところに来ているのだと覚悟を決めるしか無かった。
とは言え、ボルトアクション式は兎も角、フリントロック後装式がある程度実用範囲に達していることもあり、幕府上層部が現物を見たいと申し出てきた。
まだ実用化出来ているとは言い難いが、実証試験に用いることが出来るレベルなので試射と今後の銃の発展とその戦術を披露する程度ならば……と返答した。
結果、江戸城内吹上馬場にて試射が行われた。
想定通り、試製ファーガソン・ライフルは尾栓付近に亀裂が生じたり、燃焼ガスが漏れたりしたが、火縄銃と違い、発射速度などに雲泥の差があり、命中精度は兎も角、弾幕射撃による敵集団の迅速な制圧を可能としたそれに参加した老中らは仰天していた。
が、量産は兎も角、耐久性に難がある現状では、配備出来るものではなく、引き続き研究開発を継続ということで予算をふんだくることに成功した。




