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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
密貿易

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通信手段とその技術

明和8年3月10日 江戸 新橋 有坂民部邸


 海底電線に用いることが出来るガタパーチャの入手の報を受け、それの活用法を考えていたのだが、結局、具体的な活用法を見つけることが出来なかった。ラテックスに硫黄を混ぜる様にガタパーチャから採れるペルカゴムに硫黄を添加する量を増減させることも検討してみたが上手くいく気がしない。


 とは言え、最終的な利用方法である海底電線そのものは通信速度の壁を破壊する効果的なものであるわけで、その有用性からペルカゴムの実用化を図ることにした。


 現在の通信速度は汽船通信が最速であり、江戸~大坂が1日、江戸~小倉が3日程度掛かっている。これでも飛脚だの早馬だのに比べれば随分速達化出来たのであるが、仮に長州征伐なんてやれば後方兵站基地である大坂や前線基地の小倉から最前線への通信でも遅いくらいだ。


 そう考えると、電力までは必要ないけれど電気通信は是が非でも欲しい。そして、海底電線を敷設出来るならば箱館~仙台~江戸~大坂~小倉~長崎の列島縦断通信網が整備出来、各地の異変を察知するやいなや動員を掛けることが可能になる。


 特に西南雄藩の動きの察知と同時に江戸がそれを把握出来るというのは大きなアドバンテージとなる。江戸にいる人質を人質として活用出来るし、品川から艦隊を送り込み数日以内に砲艦外交で威圧することも可能となる。


 鉄製鋳造大砲もそろそろ重要になりそうだが、電信も開発をするべき時期かもしれない。


 ペルカゴムの欠点である空気中で放置すると酸化して劣化するという問題点も交換時期の設定と予備の電線の水中保管という対応で暫くは乗り切れるだろう。


 そう言えば、上方、大坂の米相場があっという間に伝わると聞いた。なんでも旗振り通信とか言うそうだ。熟練者が旗振りを行うと最速で四半時と掛からず大坂~広島に米相場が伝達されるそうだ。


 ただし、これはあくまで相場情報の伝達という条件だから、価格の上下、値幅など限られた条件だからこそ伝達の速達性と正確性が保証されていると言って良い。これから先、欧州で発展する腕木通信よりも限られた情報のやりとりしか出来ない……勿論、改良すれば良いが、情報漏洩がリスクだ……のでは、運用は難しい。


 それでは、無線通信ではどうだろうか?無線通信とモールス信号の組み合わせならば、仮名で長文を送ることが出来る。問題は電力供給と真空管の開発だ。だが、よく考えたら、そこまで大掛かりなもの用意する必要があるのか?確かに安定性は必要だが、この時代、混信とかありえないわけで、仮にそれを考慮するにしても、複数回の送信を行うことで一定精度を保てるんじゃないだろうか?


 だったら、何も真空管なんてオーパーツなモノを作る必要はない。単純に火花送信機……ぶっちゃけ最初は圧電素子で十分だ……とコヒーラ検波器……これも科学の実験で用意できる簡単なもので十分……あとはアンテナ、電鍵、電球で構わんだろう。必要な電力は水力でも使えばよかろう。


 なんだ、科学の実験で十分にこの時代でも無線通信を実用化出来るじゃないか……。問題は電球だが、エジソンが電球発明した時にフィラメントを作る時に日本の竹を使っていた……じゃあ、竹繊維を用意すればいいじゃないか。竹細工職人に何とかさせれば良い。んでガラスはガラス職人にでもやらせれば良い。ついでだ、江戸切子でも造らせて産業をひとつ増やそうじゃないか。


 あれ?ガタパーチャ、ペルカゴム、海底電線の必要性がなくなった気がする……。まぁ、良いか。

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