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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
密貿易

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悪事の片棒を担ぐ

明和7年12月22日 江戸 品川湊


 密貿易計画は起案からわずか1ヶ月で第一陣を送り出すことになった。


 第一陣は仙台藩の塩釜湊、久保田藩の土崎湊より東北諸藩から集めた南部鉄器、春慶塗、漆器などの工芸品を満載し八丈島へ向かった。この際、有坂海運の快速クリッパー船を用いず、在来の菱垣廻船、樽廻船などをチャーターした。


 八丈島から快速クリッパー船に積み直し、太平洋を南下、マリアナ諸島を経由し、オランダ領東インドのモルッカ諸島アンボイナを目指す。アンボイナはオランダ東インド会社(VOC)の拠点である。


 もっとも、明和7年は1770年であるから20年もすればナポレオン戦争が始まるわけで、その混乱に乗じて東インド一帯を大英帝国に先んじて制圧するという野心があったりなかったり……。


 アンボイナからはバタヴィアへ向かいキニーネ、ゴムの木、ジャワ更紗を入手する船団とバンダ海近辺で黒壇、白檀などを手に入れる船団に分割し、再びアンボイナで集結するとミンダナオ島沖を通過して一気に江戸湾を目指すという計画である。その行程、往復で2ヶ月を予定している。


 既に実用化されている蒸気船であれば、風向きや風速などを考慮しなくても良いわけだが、流石に中継地に石炭の集積がある日本本土と違い、彼の地ではそうもいかない。まぁ、豪州でも併合して入植させれば石炭はいくらでも取れるけれど……流石にそれをやるには寿命が足りない……。


 というわけで、密貿易が軌道に乗るまでは快速クリッパー船によるピストン運行が適当と判断した。


 今回の密貿易における幕府側の目論見は所謂抜荷による大儲けだが、私個人の狙いはそこではなく、天然資源の確保である。そう、安定して稼げる品目である砂糖や高級香料、唐木などは、片手間仕事と考えている。真の狙いはゴムの実用化である。


 この世界に転生して、相良で色々とやっていた頃のこと……懐かしいな……その頃、どうしてもゴムがなくて色々なことに躓いていた。燃料タンクなどが最たる例だ。ゴムシーリング出来るのと出来ないでは大きく違う。そして、ゴムタイヤの実用化と普及だ。


 そのためには何が何でも東インド、マレー一帯で手に入る筈のゴムの木を日本に持ち帰ってゴムの国産化をしないといけない……。


 必ずしも幕府への忠誠心だけで悪事の片棒を担ぐなんて出来るわけがない。


 

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