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【完結】君を忘れたふりをした―記憶を失った僕に、彼女は友達だと嘘をついた―  作者: ズッキー


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24/30

第24話 星の下で

プラネタリウムは、平日の昼だった。


人は少ない。

ロビーは静かで、少し暗い。


美月はゆっくり歩いていた。

圭太が横にいる。


少しだけ息が上がる。


「大丈夫?」


圭太が聞く。

美月はうなずいた。


「うん」


少し笑う。


「思ったより元気」


圭太は少し心配そうな顔をしたままだ。

受付でチケットを買う。


係の人が言う。


「まもなく上映が始まります」


二人はドームの中に入った。


丸い天井。

暗い空間。


席はまばらだった。


二人は後ろの方に座る。

椅子がゆっくり倒れる。


天井が広がる。

まだ星は出ていない。


暗闇。


美月は小さく息を吐いた。


「懐かしい」


圭太が横を見る。


「来たことあった?」


美月は少し笑った。


「あるよ」

「……圭太と」


圭太は目を瞬かせた。


「そうなんだ」


美月はうなずく。


「事故の前」


少しの沈黙。

圭太は天井を見上げた。


「覚えてない」


小さく言う。

美月は優しく笑った。


「いいよ」


その声はとても柔らかい。


「今来てるし」


そのとき。

ゆっくりと照明が消えた。

ドームが完全に暗くなる。


そして。

星が現れた。


無数の光。

夜空が広がる。


美月の目が少し大きくなる。


「きれい」


小さくつぶやく。

圭太は星よりも、美月を見ていた。


その横顔。

少し痩せた頬。

圭太は静かに言った。


「美月」


「ん?」


星の光の中。

圭太は少し息を吸った。


「俺」


言葉を探す。


「ちゃんと思い出せてない」


正直な声だった。


美月は黙って聞く。

圭太は続ける。


「でも」


少し笑う。


「好き」


美月の心臓が大きく鳴る。

圭太は言った。


「記憶なくても」

「やっぱり」

「……好きになった」


美月の目に涙が溜まる。

圭太は続ける。


「だから」


ゆっくり言う。


「たぶん」


少し照れくさそうに笑う。


「昔の俺も」

「同じこと思ってたと思う」


美月の涙がこぼれた。

星の光が揺れる。


圭太はポケットから小さな箱を取り出した。

美月は目を見開く。


「え」


圭太は少し焦った。


「これ」


笑う。


「駅前の雑貨屋で見つけた」


美月は涙を流しながら笑った。


「雑貨屋?」



圭太はうなずく。


「うん」

「本当は」

「……もっとちゃんとしたやつ」

「買う予定だったと思う」


美月は首を振る。


「いいよ」


涙が止まらない。


圭太は箱を開けた。


シンプルな指輪。

安いもの。

でも。

光っていた。


圭太は言った。


「美月」


星空の下。

静かな声。


「結婚してください」


美月の涙があふれる。


声が出ない。

圭太は少し不安そうに笑った。


「やっぱり早すぎた?」


そのとき。

美月が手を伸ばした。


圭太の手を握る。

強く。

そして言った。


「はい」


涙の声。


「お願いします」


圭太は少し驚いた。


それから。

笑った。


星空の下で。

二人は静かに笑っていた。


でも。

少しして。

美月がぽつりと言った。


「圭太」


「ん?」


美月は星を見上げたまま言った。


「私ね」

「……膵臓がんなんだって」


圭太の呼吸が止まる。

美月は続ける。


「見つかった時には」


小さく笑う。


「もう遅かったみたい」


星は静かに輝いている。

美月は言った。


「だから…」

「だからね……」

「……あんまり時間ない」


沈黙。

圭太は何も言えない。


美月は小さく笑った。


「ごめんね」


その声は、とても優しかった。


星は静かに輝いていた。

二人の上で。

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