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【完結】君を忘れたふりをした―記憶を失った僕に、彼女は友達だと嘘をついた―  作者: ズッキー


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23/30

第23話 約束の場所

病室の窓から、朝の光が差し込んでいた。


白いカーテンが静かに揺れる。

美月はベッドの上で目を開けた。


隣の椅子に、圭太が座っている。

腕を組んだまま、眠っていた。


少し首が傾いている。

美月は小さく笑った。


「……ばか」


小さくつぶやく。

その声で圭太が目を覚ました。


「……あ」


慌てて姿勢を直す。


「起きてた?」


美月はうなずいた。


「いつから?」


「さっき」


圭太は少し照れくさそうに頭をかいた。


「ずっとここにいたの?」


「うん」


当たり前みたいに言う。

美月は少し困った顔をした。


「仕事は?」


圭太は肩をすくめた。


「サボり」 


美月は思わず笑った。

でも、その笑いはすぐに消える。


少し沈黙。

圭太が口を開いた。


「美月」


「ん?」


圭太は少し迷った。

それから言った。


「行こう」


美月は首をかしげる。


「どこに?」


圭太は言った。


「プラネタリウム」


美月の時間が止まる。


「……え?」


圭太は少し笑った。


「約束してたんだろ」


美月の目が揺れる。


「でも」

「私」


言葉が止まる。

圭太は続ける。


「プロポーズ」


さらっと言う。

美月の顔が真っ赤になる。


「な、なに言って」


圭太は笑った。


「ボイスメモで聞いた」


美月は両手で顔を隠した。


「もう最悪」


圭太は少しだけ真面目な顔になる。


「でも」


静かな声。


「本当だった」


美月は手を下ろす。

圭太は続ける。


「俺」 


少し照れくさそうに笑う。


「ちゃんと覚えてないけど」


でも。

その目はまっすぐだった。


「言おうとしてたんだろうなって思う」


美月は何も言えない。

圭太は続ける。


「だから」


少しの間の後圭太は力強く言う。


「やり直す」


美月の目が揺れる。

圭太は言った。


「もう一回」

「最初から」


沈黙。

美月は少し下を向いた。


「でも」


声が小さい。


「私」


圭太は静かに聞く。

美月は続けた。


「時間」

「そんなにないよ」


圭太はうなずく。


「知ってる」


美月は驚いた。

圭太は続ける。


「それでも行く」


その声は静かだった。

でも。

揺れていない。


「今日」

「行こう」


美月の胸が強く鳴る。


「……今日?」


圭太はうなずく。


「うん」

「今」


美月は笑った。

でも。

涙が出てくる。


「病院抜け出すの?」


圭太は少し考えた。

それから真顔で言った。


「たぶん怒られる」


美月は吹き出した。

涙がこぼれる。


「ばか」


圭太は肩をすくめる。


「でも」


静かな声。


「約束」


美月はしばらく黙っていた。

それから。

小さくうなずく。


「……行く」


圭太は笑った。


「よし」


立ち上がる。

美月はベッドからゆっくり体を起こした。


まだ少しふらつく。

圭太がすぐ手を出した。


「大丈夫?」


美月はその手を握る。


「うん」


少し笑う。


「圭太がいるから」


圭太は照れた顔をした。

二人は病室を出る。


廊下はまだ静かだった。

朝の病院は、人が少ない。


ゆっくり歩く。

圭太が言った。


「逃げるみたいだな」


美月は笑う。


「映画みたい」


病院の自動ドアが開く。

外の空気。

朝の光。


二人は外に出た。


少し冷たい風。

空は青い。


美月は空を見上げた。


「いい天気」


圭太は言った。


「星は見えないけどな」


美月は少し笑った。


「プラネタリウムだから」


圭太も笑う。 


二人は歩き出す。


でも。

美月はまだ知らない。


今日が―

二人にとって――

とても大切な一日になることを。

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