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しあわせの中に 彼女をさがす  作者: はやはや
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未来への展望

 佑太と初めて会ったのは、大学に入学してすぐのオリエンテーションだった。たまたま隣同士になり、話しているうちに気が合うことがわかった。

 僕が通っていた精華医大は、一年の教養課程の中の、人文・社会系選択科目を、近くにある清修大学で履修することになっていた。

〝様々な学生との交流を通して、人間的成長を図る〟という理念の元、実施されているカリキュラムだった。

 講義のある日は佑太と一緒に、清修大に行くことが多かった。佑太は快活で、そんな雰囲気に惹かれるように、男女問わ

ず友達が多かった。

 清修大の学生とも、すぐに友達になっていたほどだ。

 そして前向きで、展望を持っていた。医師という枠に留まらず、自分ができることは何か、ということを常に考えているようだった。



 そんな佑太が驚くことを口にしたのは、スチューデントドクター試験を、間近に控えた四年の時だった。

 スチューデントドクター資格は、二種類のテストに合格した、医学部生に与えられる認定資格で、この資格を取得し病棟実習に臨む。

 テストのうちの一つは、CBTといってパソコンが無作為に出した問題を、画面上で解いていくもので、もう一つはOSCEオスキューと呼ばれる、客観的臨床能力試験だった。

 臨床現場で、患者を見る能力が試される試験だ。

 それらを前に模擬試験を受けたり、学生同士で患者役と医師役を交代しながら、OSCEの練習をする日々だった。

 あの日も講義が終わった後、友達何人かと教室に残り、得意分野の問題を教え合ったり、OSCEの練習の続きをしていた。

 それが一段落し、何となく将来の話になった時、佑太が言ったのだった。

「医療職とは関係のない職種にもチャレンジしたいんだよな。まぁそれは、医師免許取ってからだけど」

 その言葉には、既に決意が見られた。

「どういうこと?」

 友人の一人が訊く。

「卒業したら、美容師の資格を取りたいんだ」

 思いもよらない佑太の言葉に、全員が絶句した。

 これから受験する、スチューデントドクターの試験、臨床実習、卒業試験そして国家試験。そのことを考えるだけでも、気持ちが萎えそうになるのに、佑太が見ているのは、さらにその先のことだった。

「いや。お前本当すごいわ」

 別の友人が言った。きっとあの時、その場にいた全員が、佑太ならやり遂げると思っていたのではないだろうか。



 その日、佑太と僕は二人で大学を出た。さっきの話を詳しく訊いてみたいと思った。

「どうして美容師になりたいんだ? 医師とは無関係のような気がするんだけど」

「あぁ、それ」

 佑太が口元に笑みを浮かべる。その表情を見て、さっきの話は冗談だったのかと思った。しかし、そうではなかった。

「友達の子どもの力になりたいなって思ったから」

 前を向いて話す、その横顔は真剣だった。

「どういうことだ?」

 佑太は詳しく話してくれた。

 高校時代の友達には、二歳になる子どもがいる。その子は、おそらく発達の面で、でこぼこがある。

 いつもと違うことが起きるとパニックになる。最近は、爪や髪を切るのを暴れて嫌がり、その子が寝ている間に、そっと切っているのだという。

「そんなことってあるんだな。大変だな」

「だろ。感覚過敏っていうやつだと思うんだけど。その子にしたら、爪や髪を切られることに違和感や痛み、みたいなものを感じているかもしれないって思ってさ」

 佑太が続ける。

「その子自身は何も悪くなくて、むしろ辛い思いをしているかもしれないのに、これから先、大きくなってもパニックになっていたら、周りからどんな目で見られると思う?

 そう考えると、たまらなくなってさ」

「その子の髪を切れるようになるために、美容師ってことか」

 そう言うと佑太は頷いた。

「最終的には、福祉美容師になりたいんだけどな」

 まだ先が、あったのかと驚いた。「そっか」という言葉しか返せなかった。

 なぜ、こんなにも自分の進みたい道を、佑太は具体的に思い描けるのだろう。

 こんな強い気持ちを自分も持てるようなことが、これから先の人生にあるのだろうか。

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