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しあわせの中に 彼女をさがす  作者: はやはや
13/14

それぞれのこれから

 動画に映っているのは、Soleilの店内だった。

 今日僕が髪を切ってもらった、椅子の横に少年が立っていた。中学生くらいだろうか。

「大学の時、話した友達の子どもが、この子」

 なるほどと思った。あの時、二歳くらいだったから、十四歳くらいになるのだろうか。

 まだ、幼さを残した横顔には、戸惑いと不安が滲んでいる。その隣で語りかける佑太の姿が写った。

「この椅子に座ります」

 その子は、何も言わない。次に佑太は、鋏を手に取り、切るように動かして見せた。

「これが鋏。これで髪を切ります。持ってみる? 切るのは痛くないよ」

 佑太はそう言って鋏を渡す。その子は恐る恐る受け取り、ちょきちょきと鋏を動かしながら呟いた。

「はさみ。いたくない。」

「そう。痛くない」

 佑太が声を重ねる。その後、佑太が誘うとその子は、椅子に座った。ケープをつけることを嫌がると、佑太は無理をしなかった。

 肩にタオルをかけることは大丈夫だったようだ。タオルだけかけてカットが始まった。

「今日はちょっとだけ切るね」

 と言って襟足だけ整え

「はい。おしまい」

 佑太が言った。椅子から立ち上がって、振り返った時の、その子の表情は、安堵とも嬉しさともとれるような笑顔だった。

桐杜きりとやったねー!」

 母親なのだろう。彩さんとは違う、女性の声がした。

 そこで動画は終わった。佑太はスマホを自分の方に向けながら言った。

「この日は襟足だけだったけど、今はケープも大丈夫だし、カットは一通りできるんだよ。

 次はシャンプーに挑戦しようとしているところなんだ」

 胸が熱くなる。

 揺るぎない信念を貫いた佑太の姿に。

 今までできなかったことに、挑戦してみようとする子どもの姿に。

 僕はこれまで波間を漂うように進んできたのだ、と思った。それは楽だった。傷つかずに済むから。責任を負わずに済むから。

「まぁ後は良平次第だよな」

 やっぱり佑太には敵わない。



 佑太とはコーヒーショップの前で別れた。駅は目の前だったけれど、帰りも歩こうと思った。歩いて気持ちを整理しよう。



 これからの自分は、どうしていきたいのか。そう想像する未来には、瑞希の姿がはっきりと見えた。

 この思いを瑞希に伝えることこそが、人生の幸せを決めると確信した。


――瑞希と二人で一緒に年齢を重ねていきたい。

  僕と一緒に家族という新しい記憶を紡いでほしい。


 顔を上げると、線路沿いにある街路樹が風を受け、手を振っているように見えた。

 まるで〝頑張って〟と送り出してくれているかのようだった。

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