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しあわせの中に 彼女をさがす  作者: はやはや
12/14

二人の時間

 瑞希が用意してくれた朝食兼昼食を食べ、少し早かったけれど家を出た。

 店がマンションから、私鉄で一駅しか離れていないということもあり、散歩がてら歩くことにした。店の最寄り駅から、住宅街に入り、少し坂を上ると右手に学校がある。

 その学校の角を曲がり歩いていくと、住宅の前にイーゼルのような形の看板が、立てられているのが目に入った。

 看板には〝Soleil〟と手書きのような、丸い文字が書いてあった。Soleilソレイユはフランス語で、ひまわりとか太陽という意味らしい。

 その言葉を選んだのも、佑太と彩さんらしいなと思った。どちらも二人のイメージにぴったりだ。

 建物自体は周りの住宅と同じで、三階建の一階部分が店舗になっている。

「こんにちは」

 と言って木製のドアを開けた。

 ドアの向こう側には、淡いクリーム色を基調とした、落ち着いた空間が広がっていた。

「あ! こんにちは」

 僕に気づいた彩さんが、にこやかに迎えてくれる。

 紺色のフレアワンピースに、グレーのレギンスを合わせた彩さんは、店の雰囲気にぴったりだった。そのまま少し話す。

 一年前の結婚式の時、長かった髪は切られ、今はショートヘアになっていた。頬や顎が丸みを帯びている彩さんの顔立ちに、よく似合うヘアスタイルだった。

「ちょっと待ってくださいね。今、呼んできます」

 と言って、店の奥に向かって歩いていく。シャンプー台の向かいにある扉を開け「佑太」と、彩さんは声をかけた。



 彩さんの後ろに佑太の姿が見えた。一年前と、ほとんど変わっていない。

 明るめのブラウンのチノパンに、ボーダーのシャツ。ラフな恰好だけれど似合っている。

「良平、久しぶりー」

 と見せる笑顔も昔のままだった。そのことに安心する。

「佑太、変わらないな」

「良平こそ。元気そうで何より」

 佑太の案内で席に座り、早速カットをしてもらう。瑞希から託されていた、訪問カットのお礼を言った。

「俺、ちゃんと夢叶えただろ」

 鏡に写る僕の顔を見て、佑太が笑顔で言った。

「尊敬するよ」

 そう返すと照れたような表情を見せる。

「昔から思っていたけど、良平の髪って癖がなくて綺麗だよな。元々、少し茶色っぽいし」

 僕の髪を濡らした後、ブロッキングしながら佑太が言う。鋏が髪に入るのがわかる。櫛で髪を梳きながら、小気味よく切っていく。

 今、鋏や櫛を持つ佑太の手が、かつて病理学を一緒に学んでいた時に、顕微鏡を操作していた手と同じだ、ということがどこか不思議だった。


「これでいいかな?」

 鏡で後ろ姿を写してくれながら佑太が言う。垢抜けた感じのミディアムヘアに仕上げてくれた。

「ありがとう」

 と言って席を立つ。彩さんが「二人でちょっと出てきたら」と言ってくれた。

「この後の時間の予約は、私担当のお客さんなので、時間気にしないでくださいね」

 とも言ってくれた。こういうさり気ない気遣いができるところが、佑太を惚れさせたのかなと思う。

 佑太も「じゃあそうする」と言ったので、会計を済ませて二人で外へ出た。



 駅前まで出て、チェーンのコーヒーショップに入る。佑太は昼ご飯がまだだったらしく、サンドイッチとコーヒーを、僕はコーヒーを頼んだ。

 ちょうど空いた広めのソファー席に、向かい合って座った。

「昼休憩取るのも大変だな」

 と言うとサンドイッチの封を切りながら

「良平もそうだろ」

 佑太が言う。

「まぁ。でも慣れっていうか、食べること自体忘れることがある」

「それでよく倒れないな」

 サンドイッチを口に運びながら、呆れたように佑太が言った。それからしばらく、お互いの近況を話した。

「瑞希さんとは、これからどうすんの?」

「どうするって?」

「いや、だからさ結婚とか考えてるのか?」

 そう訊かれ自分の手元に目を落とす。

「良平さ、昔から何でもそつなくこなしてるけど、我を通したことってないだろ」

 図星だった。一番突かれたくないところだった。たぶん僕は今のことしか考えていないのだろう。今が心地よければ、それでいいというような。

 僕が黙っているのを見て、佑太が続けた。

「言いすぎたかも。ごめん」

「いや、そんなことない。佑太の言う通りだから」

 言葉を選ぶように、佑太がゆっくり話し始めた。

「この間、瑞希さんの実家に訪問カットに行っただろ? 帰り近くまで瑞希さんを乗せて帰ったんだけど、彼女言ってたぞ。

『今、幸せなんです』って。

『良平君と、毎日一緒にいられることが。できるなら、これからもずっと一緒にいたい。

でも、こんな気持ち、私からは言えないです』って」

 その話を聞いて、どきりと心臓が鳴るのが聞こえる気がした。瑞希は、そんな風に思ってくれているのか。

「一緒に住んでるんだし、ちょっと先のことを考えてもいいんじゃない?」

 佑太に言われると、ぐうの音も出ない。

「そうだ! 良平に見せたかったものがあるんだよ」

 話題を変えると同時に、佑太の声が明るくなる。

「何?」

 訊くと佑太はスマホで、ある動画をみせてくれた。

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