第39話 闇皇帝の下僕たち
「アトモーネス!なんか門みたいの出て来たけどっ!?」
次の階に向う為に私達は行手を遮るゴーレム達が消えた洞窟を駆け抜けていた。目の前に見えるのは大きな門だった。それは扉の無い、言うなれば神社の鳥居みたいな門だった。
まぁ形状は違うけど。日本の鳥居じゃなくて造りが西洋風だった。
「突っ込む!掴まっておれ!」
アトモーネスは、私とシロくんを背中に乗せながらそう叫ぶと、バサッ!バサッ!と、細かく羽撃き両翼を広げた。
「えっ!?ちょっと待ってよ!なんかヤバそーだけどっ!?」
私の良く知る朱色の鳥居、佇まいからして神聖そうなそんなモンじゃなくて真逆を行く門だ。真っ黒でしかもなんか黒い靄みたいので覆われてる。突っ込むと言う事はその真っ黒な靄の中に突き進むと言うこと。見るからにヤバそうな感じしかしない。だから思いっきり怯んでそう言ったんだけど、アトモーネスは両翼を折畳んで超加速の如くその門目掛けて頭っから突進した。
「わっ!」
私はそのお陰で物凄い風圧を全身に受け吹き飛ばされそうになった。
「蒼華姉様!掴まって!」
前に座ってるシロくんの声に私はぎゅっ!と、彼にしがみついた。
「ひぇぇっ!!なんなのよっ!無料アトラクションにも程があるっつーの!こんなんクレーム案件じゃ!!」
「なんの話ですか?」
私の毒吐きにシロくんのとっても冷静な声が返って来た。
「いえ……何でもありません。」
(ハナシ通じんとむっちゃ冷静になれるな………。)
そう。彼に……有り難い?事に話は通じなかったので、とっても冷めたのだ。私のクレーム欲は。
けど、、、その門を潜り抜けたところで私のクレーム欲は再燃する事になるのだった。
アトモーネスが門を潜り抜けたら急降下したからだ。真っ暗な闇の中だ、門潜ったらいきなり暗闇でしたっ!そして落ちる!!
「きゃあっ!なにっ!?えっ!?」
それはもう頭から地に向かって突っ込む様に。そりゃもぉアータ!どっかのなんちゃらマンウテンの如く真っ逆さまに落ちてんのよ!水が無いから濡れんで済んだけども!
「ちょっと!!安全バーとか無いんだし?そんなサービス精神いらんてっ!!」
恐怖!目も開けてられないぐらいの猛スピードで落下するモンで、私は兎に角叫んでいた。兎に角!ケツが浮く!!シロくんにしがみついてないと吹っ飛びそうだった。
「何を言うておる!しっかり掴まっておれ!」
「ひぇぇぇっ!!!!」
もぅ急降下!しかも爆速!おっかなくて文句も言えない!兎に角、情けない悲鳴を上げながら私は、無料アトラクション、女帝コースターに強制的に乗車させられていたのだ。
シロくんにしがみつきながらぎゅっと目を閉じていた。
絶叫系大好きで乗れば両手上げて騒ぐ方だけど、これはちょっと体感からして違う!バンジージャンプのヤバい系!切れそうな命綱巻きつけられて飛ばされてるみたいな感覚!
(怖さしかねー!!)
「着いたぞ。」
でも、、、そのすぐ後だった。アトモーネスの声が聞こえたんだ。
「えっ!?」
私は恐る恐ると目を開けた。
確かに空気抵抗とか感じないし、落ちてる感じもなくなってた。と言うより停止してた、全ての感覚が。
目を開ければそこには洞窟が広がっていた。しかもさっきと余り代り映えのしない空間が目の前にあった。
ジュウゥゥゥ……。
背後で何かが焼ける様な音が聞こえたのも直ぐだった。
!?
私達は………その音に振り返っていた。そう、アトモーネス、グロームさん、タイラント、ライムス、そしてその背に乗るネフェルさんも。
「えっ!?門が焼け焦げてますけどっ!?」
私は洞窟の入口に建っている……えっと……きっと、潜って来たであろう門が黒い炎で燃え焼け焦げていくのを見て言った。
バサっ!と、アトモーネスは翼を1度羽撃たかせながら言った。
「なるほど。戻れぬと言うことか。」
「えっ!?」
私が聞き返すとシロくんが言った。
「先に進むしかないと言う事です、蒼華姉様。」
そう彼が言った後だった。
焼け焦げて消えた門の代わりに洞窟の入口は塞がれたんだ。それは音も無く、土壁が現れて私達が通って来た暗闇の空間とを遮断する様に塞いでしまった。
「………まじか……完全なる洞穴になってしまってますが?え?私達は穴掘り団結成ですかね??」
「は??なんて??」
シロくんに真顔でツッコまれた。
「……………いえ、、、忘れてください………。」
(穴掘り団ってなん??)
自分でもツッコんでおいた。
「兎に角……行くしかありませんね……。」
ネフェルさんが少し呆れた様な顔でそう言った。
「お……押忍。」
私は兎に角……頷いた。
ガシャ…ガシャ……
そのすぐ後だった。重そうな鎧の音が洞窟内に響いたのは。
はっ。として振り向けば私達の向う方角から何やら歩いて来る。またもや規律乱す事無く隊列重視の行進。でも、今回はゴーレムではなく真っ黒な全身鎧姿の騎士達だった。
銀色に光るサーベルを揃って右手に握りながら歩いてくる。黒光りする軍隊が。
「来たっ!今度は騎士っ!?でも上で見たのと違うくないっ!?」
私は目の前でこの洞窟の横幅占拠しそうな勢いで行進して来る騎士達を見て言った。そう。黒光りする全身鎧姿だけど、そのフルヘルムは闘牛みたいな大きな角が施されてて、体格も一段とガッチリムキムキっとしてる。明らかにレベルアップしてる様に視えたんだ。
チッ。と、舌打ちしたのはタイラントだった。
「飛翠達が居ねぇのを察したか。」
え?と、私が振り返るとタイラントの隣に居るグロームさんがああ。と、頷いた。
「“闇皇帝ルシエド”の下僕……“闇の騎士”。上で見た連中は偵察隊、つまり下級騎士。コイツらはその上、中級騎士と捉えろ蒼華。」
かなりのハスキーヴォイスでそう言われた。紫の眼にまで静電気みたいにバチバチっと紫電が走ってるのが何と言うか……血走ってるを地で表現しててちょいおっかない。
「う…うん、解った。」
(頷くしかねー!!グロームさんはおっかねぇのよ!正直!何しろあの“試練”で容赦なくフルボッコにされましたからね、私は。)
彼との試練はソコソコにトラウマである。
そんな事を思ってると“樹氷の神獣ライムス”が言った。彼は氷の獅子だ。
「どうする?“神導者ネフェル”よ、彼奴らは性質上、我等の力を半減させる、我等も同じ。故に対する所で“生命の削り合い”になるのは目に見えている、有効な“戦士”はこの場に居ない。最も無駄な時を過ごす事になるが?」
ライムスのとても落ち着いた声が私の脳内にもすぅぅっと届いた。
「ソレって……飛翠達のこと??」
私が聞くとネフェルさんは、徐にライムスの背中から飛び降りた。軽やかに地に着地した。
「ええ、ライムスの言う通り彼奴らに魔力は効果的ではない。」
ネフェルさんがそう言った時だった。
ガシャ……ガシャ
と、重そうな足音たてながら歩いて来た騎士達のソレが止まったんだ。
「え?」
私は洞窟内に響いてたその足音がぴたっと停止した事に驚いて目を向けた。
黒光りする全身鎧姿の騎士達は長いサーベルを揃って両手で握りながら、フルヘルム被ってる顔面の前に掲げるポージングをした。あ。と、私はその“構え”にハッとして独言の様に言ってた。
「見た事あるコレ……、“クリスタルディスティニー”の“儀式”だ……。」
「クリスタルディスティニー??何ですか?それは。」
シロくんの問に、あはは。何でもない。と、私は笑って誤魔化した。そうですか。と、シロくんは何かちょっと遠目で私を見てた。
(うっ。そんな変人見る眼しんなやっ!)
そう思いつつも、私は読んでた小説の事を思い出す………。
そう、彼等の構えが“刀礼”と言われてる構え方で、私がむっちゃ沼ってたファンタジー小説の中に出て来る描写それと同じだったのだ。だからとても驚いた。リアルでこんな騎士が刀礼の構えしてるのなんか見た事ないからダブルで驚いた。
でも……はた。と、気付く。
(ん?確か……“クリスタルディスティニー”では“王への忠誠の儀式”での描写だった。そう……“敬意の表明”の意味がある構え方だった……。)
なんてちょっと懐かしい気持ちになりつつ呑気な思考を働かせてたら、彼等の構えは一気に変わった。
一斉に両腕を上げサーベルを天に掲げたんだ。
「え………?」
同時にその剣先に黒い光が放ち始めた。それも軍隊全員の掲げられた剣先に。
「ライムス!タイラント!グローム!」
その状況に怒鳴ったのは女帝アトモーネスだった。更に彼女は半身上げて大きな嘴に碧の放光を溜めていた。
同時に騎士達の天に突き上げたサーベルは剣先から黒い光を放ちそれは彼等軍隊の頭上に大きな黒い塊を産み出していた。
バルーンの様に巨大な黒い球体が浮かんだんだ。
騎士達のサーベルの剣先から放たれる黒い光を吸収しながら、それは大きく膨れ上がる。まるで空気を注入されたバルーンの様に。
「な………何ですかっ!?アレわ!!」
私は真っ黒な騎士達の頭上に浮いたどデカい球体を見上げながらそう叫んでいた。
するとーー、アトモーネスが咆哮した。
「“碧風の咆哮”っ!!」
その後に続く様にライムス、タイラント、グロームさんが怒鳴る様に力を放っていた。
「“樹氷の咆哮”!!」
「“紫電の咆哮”!!」
「“大地の咆哮”!!」
アトモーネスの放つ6本の竜巻……、その後に軍隊の頭上から降り注ぐ強力な雷鎚。更に、地を凍らせぶっとい氷槍をアチコチから生やし騎士達の身体を穿くーー。百舌の早贄の様に突き刺し空に騎士達の串団子を作る……。
そしてタイラントの力は何かすげかった………………。
大地の鬼も同じ様に力を放ってたんだけど、、、彼の力はなんか異種で……、軍隊の立つ地面から大きくぶっとい氷柱みたいな土槍を分刻みに出没させていて、、、モグラ叩きのモグラみたいにアチコチからその土槍は突出して騎士達の身体を穿き、、、串刺。BBQの串焼みたいになった騎士達は宙に浮いていて、、、更にタイラントは叫んだ。
「“大地の圧縮”!!」
ドゴォォォンッッ!!
なんか物凄い音をたてながら天から地から地槍が突出!
騎士達は檻に囲われる様に地槍でその身体を地から天から串刺しにされていた。
でも……彼等の放っていた黒い円球は健在。しかも串刺しにされながらも騎士達は言い放った。
「“暗黒無双”!」
大きな円球が私達に向かって来た。
それは途轍もなく大きな力だったーー。
「“聖なる守護”!!」
ネフェルさんがそう叫び、金色の光が私達を包んだ。けれども、、その力を突き破り……頭上から隕石の如く……その黒い円球は落下し、、、更に私達に降り注ぐーー。
黒いナイフの様な刃が無数に。
「きゃあっ!」
ネフェルさんの力を突き破り……私達は穿かれるーー。
黒い光のナイフの雨に。全身を。
でも……タイラントの声が聞こえたーー。
「負けんな!蒼華っ!お前と飛翠は絶対に俺が護るっ!約束したんだ!!」
だんっ!!
と、、、黒いナイフの雨に突き刺されながら、、、身体から血を噴出させながら彼は私の目の前で跳び上がり、、、右手に黄色の光を溜めていた。
「“大地の恵み”!!」
彼はそう怒鳴ると地に右拳を振り降ろし直ぐに体制を整え叫んだ。
「“大地の怒り”!!」
それは生き残っている黒騎士を吹き飛ばし粉砕する力技だったーー。魔力は半減される………、さっきそう言われたから、、、タイラントの力でほぼ、半数が吹き飛ばされて粉々になったのを見て私は驚くしかなかった。
「ど………どーゆうこと!?」
私の召喚獣なのに私は何も知らない、、、でも、私は知った。
地面が……タイラントが……“大地の恵み”と叫び力を放った。そしてその力は地面を黄色に光らせ私達を包んでいた、、、地から。そしてそれは私達の傷ついた身体を癒したことを。
(…………タイラントって………何者っ!?)
私は……目の前で黒騎士達を粉砕してしまった大地の神獣をただ見つめるしかなかった。




