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能力者

「なるほど……魔力による保護ってのはそんなに大きな違いになるんだな」

「格段にちがうね。といっても、第七等級だって肉体そのもののポテンシャルが高められてるわけだから、無能力者よりもはるかに強くなるんだけどね。とにかくそれくらい第七等級と第六等級の差は大きい。それに比べたら第五等級以上は、はっきり言うと六等級の派生みたいなものに過ぎない。七つの等級に分かれているとは言っても、大別すると七等級以下か六等級以上か、の二つの区分に分けられるに過ぎないんだよ。あとは等級が上がるにつれて武具強化エンチャントができるとか、魔力共鳴レゾナンスができるとか、色々あるけど」

「俺は第七等級かな。魔具をはめると異常なくらい集中できるし、感覚は鋭くなってる気がする」

「たぶん、それで合ってると思う。この魔具をみるかぎり」

「わかるのか?」

「素材と腐蝕具合を見れば、ある程度はね」

「凄いな。さすが一流の彫金師は違うな」

「えへへ……ようやくあたしの凄さがわかってきた?」

 ギルは照れくさそうに視線を泳がせながらも、控えめな胸をわざとらしく張った。

「ということは俺もギルにうまく育ててもらえば、等級を上げることができるかもしれないんだな?」

「可能性は充分あるね! と言っても等級なんていうのはどこかの偉い人がわかりやすく仕分けしたってだけのもので、当てはまらない場合も多いんだけどね。そもそも絶対にこの順番通りに能力が発展するわけでもないし。第五等級を飛ばして第四等級が発現する人もいるし、第四等級を飛ばして第三等級が発現する人もいる。等級よりももっと大事なのは、その能力者の特性に合わせてどう紋章を作り上げていくかってことなの。たとえばユウリのような第七等級の能力者が使う魔具でも、身体能力を引き出すのか、感応力を引き出すのか、治癒力を高めるのか、もしくは全部をバランスよく高めるのかによって紋章の創り方が変わってくる。もちろん能力者の元々の資質も関係してくるし、どこの部位を中心として能力を引き出すかで素材や魔具の種類が変わってくる。指輪、ブレスレット、アームリング、アンクレットにチョーカーやリングピアス……もちろんあれもこれも全部つけるなんてわけにはいかない。身体全体の魔力の流れを歪ませちゃうから。そんなのを総合的に考えて魔具を作り出すのが、紋章彫金師の仕事なの」

「ふぅん、そういうものなんだな。ちっとも知らなかったよ。奥が深いんだな」

「ちなみに太古の人たちはカラダに直接紋章を彫ったらしいよ。ユウリもやってみたら?」

「そんなこともできるのか? それって何かメリットがあるのか」

「一切ないね。紋章が魔具を腐蝕させること、考えてみなよ。皮膚だって同じだから」

「げっ……それは是非とも遠慮したいな」

 いたずらっぽく笑みをみせるギルに、ユウリは顔をしかめた。自分の皮膚が腐蝕・・していく様を想像すると背筋が寒くなる。

「……わぁ、綺麗!」

 ユウリが言い終わるか終わらないかという時に、ギルの笑顔がぱっと輝いた。街路沿いの小さな商店のショーウインドーに、美しい宝飾品が飾られていたのを見つけたのだ。

「ねぇ、ちょっと中をのぞいてもいい?」

「ああ、いいけど早くしてくれよな。俺は外で待ってるから」

 ギルは嬉々として店に入っていった。

 ユウリは店前から離れ路地裏に入り込むと、濃い影が落ちる石階段に腰かけてギルを待った。路地裏には人影ひとつ見当たらないが、建物の上階からユウリを見る視線がないとも限らない。深く被った帽子と眼帯が咎目を隠してくれているだろうが、じっと待っているのは落ち着かなかった。

 ユウリは痺れを切らし、店の前へと戻るとガラス窓ごしにそっと中を覗いた。

 店の中では店主とギルが激しく口論をしていた。

「あのバカ、なにやってんだ……」

 全身に怒りを漲らせたギルが、地団駄を踏むように大股で店を出る。そしてユウリの姿を見つけるやいなや、開口一番に言った。

「なにあの店主、子供だと思ってバカにして!」

「おい、なにがあったんだ」

「あたしのこと、金にならない客だと思って嫌味を言ってきたの! 『子供の入る所じゃねえぞ』って。むかついたから思わず言い返しちゃった」

「なんて」

「このくらいならあたしが彫ったほうが巧いって。そしたら怒って追い出されちゃった」

「当たり前だろ……」

「だってさ、彫りは悪くないんだけどセンスがいまいちだったの。ありきたりのデザインばっかりだったし」

「そうだとしても、本人の前で言ったら怒られるに決まってるだろ」

「もういいよ、行こ! ユウリの魔具の材料をさっさと買わなきゃ」

「はいはい……」


 それから何軒かの宝飾店を回ったが、ギルはただ高価そうなアクセサリにうっとりと見とれて溜め息をつくばかりだった。とても魔具の素材探しが進んでいるようには見えない。いい加減にしびれをらしたユウリは、急かすようにギルに言った。

「なぁ、いい加減、材料探しにとりかかってくれないか。俺だって長時間人前に出るのはまずいんだよ。わかるだろ」

「はいはい、分かってるって。じゃあそろそろ場所を変えよっか。素材が売ってそうなとこ、知ってんだ」

「おい、知ってるなら最初からそこに連れてってくれよ……」

 いまだ名残惜しそうにアクセサリを見つめるギルに、ユウリは溜め息をついた。

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